中国「千人計画」メンバーだった「先端技術漏洩事件」容疑者 警察当局が注目する「中国人リクルーター」の存在

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 日本最大級の国立研究機関で発覚した、中国への情報漏洩事件が波紋を広げている。単なる「先端技術の流出」にとどまらず、実態は日本を対象とした、中国による組織的な“情報窃取戦”の一環と見られているためだ。

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 6月15日、警視庁公安部に逮捕された国立研究開発法人「産業技術総合研究所(産総研)」(茨城県つくば市)の上席研究員で中国籍の権恒道容疑者(59)のバックボーンが明らかになるにつれ、警察関係者の間で懸念が深まっている。

 逮捕容疑は2018年4月、権容疑者が産総研で行っていた研究の成果を中国企業に漏洩したという不正競争防止法違反(営業秘密開示)だ。しかし捜査が進むにつれ、容疑者と中国側の“深い結びつき”が次々と明らかになっているという。

「情報の漏洩先は北京に本社がある化学製品製造会社Uで、権容疑者から“絶縁ガス”などの製造に用いられるフッ素化合物の生成に関わる研究データをメールで受け取っていた。メールを受信した約1週間後、U社は権容疑者らを発明人として、中国国内で特許申請。申請内容は研究データと酷似したもので、その後、U社は特許を取得しています」(全国紙警視庁担当記者)

 U社の日本代理店はつくば市にあり、その代表は権容疑者の妻が務めている。代理店の法人登記によると、設立は12年。22年1月には〈フッ素化学品〉や〈各種ガス〉などの〈開発、製造、販売及び輸出入〉などの項目が事業目的に追加されていた。代理店に取材を申し込んだが「わからない」と言って電話は切られた。

「千人計画」メンバー

 権容疑者が産総研に採用されたのは02年4月。06年12月に中国人民解放軍との繋がりが指摘され、「国防7校」と呼ばれる北京理工大学の教授に就任。さらにU社やその関連会社で役員などを務めていたこともわかっている。

 その後の捜査で、権容疑者が海外の優秀な研究者などを国内に招致する中国の「千人計画」のメンバーと見られることも判明した。

「権容疑者は、同じく国防7校の一つである南京理工大学を1984年に卒業。国防7校とは民間技術の軍事転用など、習近平政権が掲げる『軍民融合』の核をなす存在とされ、日本人研究者らを積極的に招聘してきた経緯があります。18年、権容疑者は中国の全国科技大会で研究成果を讃えられ表彰を受けますが、その際に習近平・国家主席と握手を交わした写真も存在します」(同)

 権容疑者は逮捕以降、「営業秘密に当たるとは思っていなかった」と容疑を否認しているというが、捜査関係者の一人はこう話す。

「日本有数の公的研究機関に職を得て、その恵まれた設備や環境をフルに活用した研究の果実(研究データ)を、こっそり母国に横流しするなど許されていいはずがない。余罪も視野に入れて捜査を進めている」(捜査関係者)

 産総研は、取材に対して「お答えできない」と回答した。

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