AIの普及でグラビアアイドルは絶滅する? 「さつきあい」で話題、専門家は“二極化”を指摘

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AIグラビアはグラドルの仕事を奪うのか

 AIの浸透によって世界中で3億人の職が失われるとの予測もあり、アメリカではAIによって仕事を奪われかねないと映画・ドラマの脚本家1万人超によるストライキが起こり、すでに1カ月が経過しています。AIグラビアが週プレに掲載されたことで「グラドルの仕事を奪ってしまうのか」という懸念の声も上がりました。実際、グラドルたちからAIにとって代わられると心配する声を直接聞いたこともあります。

 AIグラビアによってグラドルの仕事は奪われるのか。個人的には奪われるグラドルと奪われないグラドルの二極化が起こるのではと考えています。

 AIグラビアには現状、技術的な面で欠陥があります。

 まずAIグラビアでは全く同じ人物の顔を出せません。AIグラドル「さつきあい」もきちんと見ると、ページごとの顔のバラつきがあります。人間の顔は非常にバランスが難しく、目や鼻の位置が少しでもずれるだけで同一人物には見えません。イラストならばそこまで気にならないのですが、人間に近しい、よりリアルなものをとなるとそこが気になってきます。LoRaと呼ばれる追加学習技術を使う方法もありますが、完璧とはいえません。衣装についても全く同じものは出しにくく、同じ人物で違う構図の画像を作ることが難しいのです。

 またグラビアとして考えると、大雑把なアングルなどは決められるものの細かい角度の指摘はできない点も気になります。私自身ポートレート写真を撮りますが、細かい角度のずれで写真の印象は大きく変わります。

 AIグラドルなら、写真家やスタイリスト、スタジオ代などが掛からずコストカットにつながるという声もありましたが、プロのレベルで考えると、話題性以外では使えないと思います。しかし前述したようにAIグラビアの進化は凄まじく、あくまで現時点ではという注釈が入ります。

 さらにグラビアという文化を考えると、AIグラビアは代用品にはなり得ないと考えています。グラビアでは被写体のバックストーリーが大事だからです。下世話な部分でいえば、女優やアナウンサーなど著名人の水着がそうでしょう。その人の経歴があるから水着姿に価値が生まれます。

 またグラビアにはコンプレックスの肯定という面があります。胸が大きい人は学生時代に偏見や奇異の目で見られることが多いですが、グラビアを通しコンプレックスだった部分を褒められることで、自己肯定感を高めていく。新人グラドルを追っていくことで徐々に自信を芽生えさせていく、彼女たちの成長物語としても見ることができます。こうしたストーリー性は人格のないAIには生まれません。

 演技や演奏に天才がいるように写真を撮られることで輝くグラビアの天才がいます。同じ人物なのに写真で撮られる際に、普段と違った魅力を放つタイプです。現在でいえば人気の菊地姫奈がその筆頭で、さまざまなシチュエーションごとにぞくっとするほどの違った美しい表情を見せてくれます。表情で語る、目で訴える。こうした細かい演出は人間にしかできません。役者もそうですが、優れた表現者は言語化、データ化できない“なにか”を持つものです。優れたグラビアにはこの部分を味わう楽しみがありますが、AIにはそれはもち得ません。

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