「女性目線の落語がいつか古典になれば」 ママさん真打・柳亭こみちが語る“女性版”古典落語創作の裏側

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 母親としての顔も持つ、落語家の柳亭こみち(48)が芸歴20周年を迎えた。最近は古典落語を“女性版”に翻案する、独自の創作に取り組む本人に話を聞いた。

「落語に出てくる女性といえば、町屋のおかみさんや大店の主人のお妾さん、色町の芸者や遊女、それに幽霊くらい。主人公も演じる噺(はなし)家も男性ばかりでしょ。でも、私は江戸期に生きた女中や町娘、お婆さんにも、イキイキとした存在感があったはずだと思うんです」

 こみちの代表作「死神婆」は「死神」をアレンジした作品で、強烈なインパクトを与える老婆の死神が主人公。大食いの男が登場する「そば清(せい)」は、5人の子を育てた女性を巡る「そばの清子」にという具合だ。

「古典がベースですが、登場人物の性別を変えるだけでは噺として成り立たない。『死神婆』は、お客様に喜んでいただけるまで10年ほどかかりました。子だくさんで大食いの母親が登場する『そばの清子』は、大食いタレントのギャル曽根さんみたいに、江戸期にも大食いの女性がいたはずだと」

出産後8日で高座に復帰

 こみちは大学卒業後に出版社に就職したが、故・柳家小三治の落語に衝撃を受けて数年で退社。28歳の時に小三治の弟子・柳亭燕路(64)に入門した。

「古典落語を真っ直ぐにやりたいと思っていた私は“女性落語家”と言われるのが本当に嫌で。長らく思い悩んでいましたが、ある時、私にしかできないことが“女性であること”だと気付いたんです。それで三遊亭白鳥師匠(60)の新作『長屋の花見 おかみさん編』を自分なりに練り直して演じたらとてもウケましてね。お客さんが喜ぶってこういうことだと吹っ切れました」

 これをきっかけに、こみちは女性を主人公にした新作の創作に取り組み始めた。

「噺を作るのは本当に大変。でも、女性版の落語の可能性は無限だと思うんです」

 私生活では平成22年に漫才コンビ「宮田陽(よう)・昇(しょう)」の宮田昇(46)と結婚。25年に長男を、27年に次男を出産している。

「あの頃は子どもを自転車に乗せて、着物姿で保育園の送迎をしていましたね」

 次男の出産後は、わずか8日で高座に復帰した。

「幼い長男が高座を見に来た時、私が“28歳です”と自己紹介したら、客席から大声で“ウソだ~!”って叫んじゃって。一緒にいた私の母が、慌てて口を塞いでいましたよ」

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