血圧、血糖値、中性脂肪の低下を証明、運動と同じ効果も? 万能薬・お酢の知られざる効能とは

ドクター新潮 ライフ

  • ブックマーク

Advertisement

運動と同じ反応が

 実験の内容は、血圧が高めの男女を二つのグループに分け、一方にはお酢15ミリリットルを含む飲料を、他方にはお酢を含まない飲料を10週間、毎朝飲んでもらうだけ。すると、被験者のうちお酢を含む飲料を飲んでもらったグループの約7割に血圧の低下が見られたのです。平均で最高血圧が6.5%、最低血圧が8.0%下がり、血圧が高い人ほど低下率が大きくなることも分かった。また、別の実験では、当初お酢の効果が見られなかった被験者が4カ月にわたってお酢を飲み続けたところ、少しずつ血圧が下がっていったというデータも示されています。

 お酢にこのような降圧効果が認められるのは、酢酸に血管を拡げたり、高血圧の原因となるホルモン系の活動を抑制したりする働きがあるからだと考えられています。

 それから、生活習慣病に対するお酢の効果では肥満の改善も画期的でした。肥満対策といえば、食生活の見直しや運動が重要ですが、お酢の摂取により「運動」と同じ反応が体の中で起こることが分かったのです。

 カギを握っていたのは、AMPキナーゼという酵素を活性化させる酢酸の働きでした。これにより肝臓や筋肉細胞の中で脂肪の燃焼が促進され、体が運動している時と同じような状態になるのです。また、血中に移動した酢酸からは脂肪細胞が肥大化するのを防ぐ信号が送られることも分かっています。

脂質異常症の予防にも貢献

「なかなか痩せられない」と悩む人にとっては願ったりかなったりなこの効果。それを検証した実験の方法もいたってシンプルでした。

 2009年に行われた実験では、BMIが平均27程度の肥満者175名を、1日あたり15ミリリットルのお酢を含む飲料を飲むグループ、30ミリリットルのお酢を含む飲料を飲むグループ、お酢を含まない飲料を飲むグループに分けて12週間にわたり検証しました。結果は、お酢を含む飲料を飲むグループでは、体重・内臓脂肪面積・BMI・ウエスト・血清中性脂肪値がいずれも低下。しかも体重については毎日30ミリリットルのお酢を摂取したグループで平均約2キロ、15ミリリットルのグループで同1.2キロの減少と、お酢を多く飲んだ方が高い効果が見られたのです。

 肥満改善の効果をもたらしてくれるAMPキナーゼの活性化は、空腹時血糖値の低下や食後の血糖値上昇の抑制にもつながり、糖尿病の予防にも効果的だと考えられています。また、同時にコレステロールの合成も抑制されることから脂質異常症の予防にも貢献してくれるのです。

 いずれも実験で用いられているのは15~30ミリリットル、つまり大さじ1~2杯のお酢を継続して飲むことだけ。ただ、当然ですがお酢は酸っぱいため、仮に大さじ1杯でも希釈せずに摂取するのはほとんど不可能です。

 実際、私たちが日常生活で食事を通じて摂取するお酢の量はせいぜい小さじ1杯あるかないかというところ。国内で生産されているお酢の量を人口で割ってみると、計算上、日本人1人当たりの食酢の消費量は毎日約10ミリリットル程度。しかもその全てが体内に入るわけではなく、蒸発する分や汁として容器に残る分を考えれば、体に摂取されるお酢の量はせいぜい1日5ミリリットル程度でしょう。

次ページ:容易に達成できる「1日15ミリリットル」

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。