血圧、血糖値、中性脂肪の低下を証明、運動と同じ効果も? 万能薬・お酢の知られざる効能とは

ドクター新潮 ライフ

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容易に達成できる「1日15ミリリットル」

 前回の記事では、グレープフルーツジュースやポカリスエットなどのスポーツドリンク、飲むヨーグルトなど他のドリンクに香りのよいリンゴ酢を混ぜて飲むことをお勧めしました。これらのドリンクはお酢の酸味をかき消してくれるため、コップ1杯に大さじ半分程度のお酢であれば酸っぱさはさほど感じられません。実際、グレープフルーツジュースにお酢を混ぜたものと、混ぜないものを区別できなかった人が、全体の半数近くいたというデータもあります。

 このように自分に合ったお酢ドリンクを朝晩飲めば1日15ミリリットルは容易に達成することができるのです。

 ただ、やはりお酢の本分は調味料。40年近くにわたってお酢を研究し続けてきた身としては、お酢を薄めて薬のように飲むだけでなく、料理にもうまく使って“お酢ライフ”を充実させてほしいとも思います。

 実は、調味料としてのお酢にも科学的裏付けのある効果がいくつも報告されています。約7千年にわたって人類がお酢を使い続けてきたのには、れっきとした根拠があったのです。

 調理場面でのお酢の機能として代表的なものには、「殺菌」「静菌」があります。「殺菌」とは文字通り菌を死滅させるものであり、「静菌」とは菌を増殖させない働きのことを指します。

 殺菌・静菌はお酢の機能として有名ですが、いかにも“お婆ちゃんの知恵袋”という感じで気休めくらいにしか思っていない人も多いでしょう。ところがこの機能は、さまざまな実験でその有効性が実証されているのです。

殺菌・静菌効果

 例えば、ある実験では、栄養培地へ菌を加え、摂氏30度で培養するということが行われました。菌の種類は腸管出血性大腸菌のO157、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌、セレウス菌。いずれも食中毒を起こし、死に至ることもある菌ですが、そこに0.1%の酢酸を加えるだけで4日たっても菌の増殖がみられなかった。30度という高めの温度で4日間、菌の増殖を抑えるというのは相当な静菌効果です。

 しかも0.1%の酢酸というのは穀物酢でいえば大体40倍希釈程度とかなり薄い。すし飯よりも薄い酸味で、人によっては酸っぱさを感じないレベルです。

 これだけでもすごい効果ですが、酢の物などに使う合せ酢はさらに強力。酢に塩が加わることで静菌だけでなく強い殺菌作用も期待できるようになるのです。セレウス菌など芽胞という特別な構造物を形成してしまう菌は除きますが、2倍希釈の酢に塩が約4%加わるだけで食中毒菌の多くが数分で死滅したという実験データもあります。例えば、O157でもこの液に漬けておくことで、10分後に生菌数が千分の1にまで減少したのです。

 この殺菌・静菌機能を利用して、夏場、お弁当屋さんなどでは白ご飯にほんの少しの酢を混ぜて提供するところもあるようです。それにお一人暮らし、お二人暮らしのお年寄りは酢の物などを作って冷蔵庫に入れておけば健康効果も期待できるし、食べきれなくても腐りにくいので安心。まさに一石二鳥です。

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