「プーチンを揶揄」「ロシア軍をナチスドイツになぞらえ…」 ロシアのジョーク「アネクドート」から読み解く本当の民意

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中国もアネクドートに登場

 戦争が長期化するにつれ、ロシアの国力は弱体化しそうで、漁夫の利を狙っているのが中国だ。西側からの経済制裁にあえぐロシアの資源を買い支え、着実に影響力を増している。いずれロシアは中国に飲み込まれる。そんな不安は国民にも根強いようで、ウクライナ戦争の起こる前から、こんなアネクドートがあった。

 100年前のロシア指導者はラスプーチン。

 現在のロシア指導者はプーチン。

 100年後の指導者は陳(チン)。

 戦争が始まった後も、同様の小話が生まれている。

 22世紀、強力な新型コロナウイルスがまた世界を襲った。

 アメリカでは、米大統領が国民に自宅待機を訴えた。

 フランスでは、EU大統領が国民に自宅待機を訴えた。

 旧ロシアでは、中国共産党総書記が国民に自宅待機を訴えた。

 長引く戦争で、今後もアネクドートの傑作は生まれ続けるだろう。それらはインターネットに乗って世界中に広がっていく。

 アネクドートはスラブの民の心の叫びであり、ささやかな抵抗の手段なのだ。

名越健郎(なごしけんろう)
拓殖大学特任教授。1953年、岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業後、時事通信社に入社。モスクワ特派員、外信部長、仙台支社長などを経て、2012年から拓殖大学海外事情研究所教授を務め、現職に至る。主な著書に、『独裁者プーチン』、『ジョークで読む国際政治』など。

週刊新潮 2023年5月25日号掲載

特別読物「独裁者支持の裏に“声なき声” 『プーチン』を痛烈風刺! ロシアン・ジョークで読む『ウクライナ戦争』本当の民意」より

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