麻布台ヒルズ、なぜ1棟だけ完成遅れが? 三井住友建設の巨額赤字が関係か

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 5月10日に発表されたゼネコン・三井住友建設の決算に注目が集まっている。期初に想定していた黒字が、巨額の最終赤字になってしまったからだ。

 建設業界紙の記者が言う。

「同社では前年度決算時に219億円の損失を計上しており、今期も約306億円の損失を計上したことを明らかにしています。2年間合わせて約525億円となりますが、責任を取って会長が辞任する事態となりました。しかし、深刻なのは、この損失が国内で行われた“同一の工事”から出てしまったことです」

 その三井住友建設に聞くと、

「損失がどの工事によるものなのかは明らかにしておりません」(広報担当者)

 とだけ答えるのだが、ゼネコン関係者の間では「あそこしかない」といわれている案件がある。目下、森ビルなどが進めている東京・港区の「麻布台ヒルズ(計画名・麻布台プロジェクト)」だ。

 計画によると、メインとなる森JPタワーは高さ約330メートル。高層階にあるマンション「アマンレジデンス東京」は最高で1部屋300億円ともいわれ、サイバーエージェントの藤田晋社長などが一時、購入を検討していたことも明らかになっている。が、問題の場所はそこではない。

「1部屋5億円でも不思議はない」

 麻布台ヒルズには森JPタワーの他にも2棟のタワーマンションが建つ(一部フロアはホテルやオフィス)。こちらは普通の“億ション”だ。

「それでも、隣接する『アークヒルズ仙石山レジデンス』をはるかに超えてくる価格になるでしょう。たとえば約80平方メートルの広さの部屋に5億円の値段がついたとしても驚きはありません」(不動産コンサルタントの森島義博氏)

 そんな高級タワマンの建築を任されているのは東棟(54階)が清水建設、西棟(64階)が三井住友建設だ。着工はともに2019年だが、現地を訪れてみると東棟が最上階まで出来上がっているのに対し、西棟はまだ2階までしか建っていない。工事の遅れは明らかである。

 三井住友建設のIR資料によると、巨額損失の原因は、鋼材の値上がりや部材の検査不合格による廃棄・再製作による費用などが掛かったこと、とある。タワマン1棟だけが異様に遅いのは、このせいなのか。

 とまれ、プロジェクトのすべてが完結するのは来年の6月になるという。心待ちにしているのは、一般庶民ではないだろうけど。

週刊新潮 2023年5月25日号掲載

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