“解散風”吹き荒れるなか、「麻生太郎」副総裁が頭を悩ませるお膝元・福岡の候補者選定 背景に“北九州市長選の波乱”

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 ゼレンスキー大統領の電撃訪日で盛り上がったG7・広島サミットもつつがなく終わり、永田町の次の話題はもっぱら「衆院解散総選挙」ばかりとなった。今国会終了後か、はたまた今秋以降か――。さまざまな憶測や観測が飛び交う一方で、肝心要の候補者選びがいまだに終わっていない選挙区が、各党数多く残っている。最大与党・自民党もその例に漏れず、麻生太郎副総裁のお膝元である福岡県の二つの選挙区についても、候補者が決まらず、公募を行う方針が示された。この決定の背後には、保守分裂の末に自民党候補が敗れた、北九州市長選があったという。

公募なんてせずに

 政治部デスクが言う。

「自民党の候補者が決まらず、公募となる公算が高まっているのは、福岡9区、10区。どちらも、政令指定都市である北九州市の選挙区とあって、各党が重要視しているところです。実は、2021年の衆院解散総選挙で自民党はこの二つの選挙区で敗れ、さらに比例復活もなく、議席を二つも失っているのです」

 落選した候補者はそのまま政界を引退。空白区となったまま時が流れ、解散風が吹き始めた今年5月になってようやく、候補者選びの話が持ち上がったというわけだ。

「どちらの選挙区にも、出馬に意欲を見せる自民党系の人物がいるにはいるのです。だったら、いつ解散となるかもわからない中で、公募というまどろっこしい作業を経ずに、そのまま内々に決めてしまえばいいだけの話なのですが、そうはいかないある事情があります」

 それが、今年2月に行われた北九州市長選だという。

どちらも応援しない

「この選挙では、自民党が推薦した候補・津森洋介氏が、無所属で立候補した武内和久氏に敗れるという大波乱が起きたのですが、この時に生まれた禍根が、二つの選挙区の候補者選定に、深く影響を与えているのです」

 というのも、

「もともと、津森氏を自民党が推薦することについて、麻生さんは納得せず、推薦状の書面にサインをしなかった。相手候補の武内氏が、保守分裂となった福岡県知事選挙に出馬した際、麻生さんは武内氏を応援していたからです。なので、本心では武内氏を応援したいものの、党の方針と噛み合わないため、副総裁という立場としては異例の、“どちらも応援しない”という態度を取ることにしたのです」

 その一方で、

「そうした意向を汲んだ麻生氏に近い地元の自民系県議・市議らが、党の意向に反し、武内氏を応援。その結果、武内氏は見事に当選したというわけです。実は、この時に武内氏側についた市議2人が、9区、10区、それぞれから出馬しようと目論んでいる。一方で自民党からすれば、推薦を出した津森氏を応援しなかった彼らを、なんのお咎めもなく衆院選の候補者にするのは面白くない。そこで、北九州市長選で津森氏を応援した、参院議員の大家敏志氏を9区に、10区にはやはり津森を応援した地元選出の福岡県議を、と考えているのです。つまりここでも、武内派と津森派の争いが再燃してしまったということ。下手をしたらどちらの選挙区も保守分裂となり、結果野党に再び敗れるという結果になりかねません」

厳正な審査の名の下で

 そうした複雑な事情から、県連はあえて公募というスタイルを選ぼうとしているのだ。

 自民党関係者が続ける。

「応募する条件に、“公募に漏れた場合でも、無所属として立候補しない”を付け加えておけば、両者を応募させ、“厳正な審査”の名の下で候補者を選定する建て前ができる。公募もせずに武内派を落とせば、保守分裂選挙にはなりませんからね」

 しかし、ことはそう簡単には収まりそうにないのだ。

「党が9区に推そうとしている大家氏といえば、“自分は麻生さんの愛人”だとまで豪語するほど、麻生氏の側近中の側近です。北九州市長選では津森氏を応援し、“麻生氏との間に隙間風が吹いた”などと言われましたが、決定的な決裂には至っていない。一方で武内氏を応援し当選に導いた地元市議も、当然ながら麻生さんの覚えが高い。つまり9区の候補者は、津森派、武内派のどちらとも、麻生さんの手下になるのです。最終的には、麻生さんが判断を下さなければならないのですが、前回の北九州市長選のように、“どちらにも与しない”という態度を取れば、保守分裂という最悪の事態になりかねません。本人も相当頭を悩ませているそうですよ」

“泣いて馬謖を斬る”が、できるのか――。

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