コンドーム柄のネクタイで高校へ…性感染症・性教育の講演を年に100回こなす泌尿器科医によく持ち込まれる“相談内容”は?

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性に関する注目度が高まる現状

 泌尿器科医の岩室紳也医師(厚木市立病院・泌尿器科=火曜日担当)は30余年間、性感染症対策に奔走してきた。全国各地での講演回数は年に約100回。各高校からの依頼では、性感染症+性教育に触れ、「先生! セックスは何歳からやってもいいのですか?」と、いうあどけない質問にも、真摯に回答してきた。

 日本では目下、法務省の法制審議会で、性交同意年齢の引き上げ(現在の13歳から16歳に)などが審議されている。性に関する注目度が高まっていることから、岩室医師の出番はさらに多くなった。

 また、「梅毒」の“復活”という現状も見逃せない。戦後間もない時期、梅毒の罹患者は20万人を超えていたが、ペニシリン系抗菌薬の開発で、ほぼ死滅化した。ところが厚労省の報告によると、2011年頃から急速に息を吹き返し、昨年10月には性感染症の調査開始以来、過去最多の1万人強を記録している。

 梅毒以外の性感染症には、「性器クラミジア感染症」、「性器ヘルペスウイルス感染症」、「尖圭コンジローマ」、「淋菌感染症」等もある。同省によると、毎年、こうした性感染症の世界・罹患者数は、推定で3億5700万人。コロナ禍の海外渡航禁止時期が終わり、海外旅行など国際交流が復活しつつある今、性感染症の罹患者数が減少に転じるとは思えない。

 そこで岩室医師が講演などで強く推奨しているのは、性交感染症のリスクを抑えるコンドームの使用。演台に立つ岩室医師のネクタイは、カラフルなコンドーム柄だ。

「30年ほど前、デンマークに住む知人からプレゼントされたものです。性感染症を抑える対策として、コンドーム装着の大切さを知ってほしいというパフォーマンスです」

 日本エイズ学会の認定医でもある岩室医師は10年ほど前から、「正しいコンドームの着け方」をブログで公開している。5分ほどの動画だが、2023年5月現在のアクセス数は672万件にも及ぶ。

今こそ確認すべき「コンドームの正しい使い方」

 この機会に、岩室医師が口をすっぱくして喚起している「コンドームの正しい使い方」を確認しておこう。

1. 装着前に爪を切ってヤスリで研ぐ
2. 封を開ける前に裏と表を確認し、丁寧に開封する
3. 精液溜まりを指でつまみ、空気を逃がしながら、根本までゆっくりと装着する
4. 途中で陰毛を巻き込んだり、摩擦でめくれたりした場合、コンドームが傷付く、あるいは破れてしまう可能性がある。そのときはためらうことなく捨て、新品に取り換える
5. 終了後は精液を外に漏らさないように用心しながら、速やかに外す
6. 未使用のものを持ち歩く際は固いケースに入れる。財布など内容物が傷つきやすいものに入れない

 そしてもう1点。

「コンドームは靴と一緒です。装着の感じが自分の性器にピッタリと合った商品を選択しましょう。そのためには、メーカーなどが違う各種コンドームを購入し、試すことです」

 ただし一方で岩室医師は、たとえコンドームを装着しても、HIV(エイズの原因となるウイルス)に感染するケースは少なくないと語る。加えて、コンドームの装着に慣れた人でも、「正しい着け方」を知らない人は意外に多いもの。間違った着け方で不慮の事態を招くケースもある。

「性器と口の接触から感染する(口腔性交等、性交類似行為)こともあります。極端な話ですが、セックスをしないことが一番なのです。肌と肌を触れ合わせてもいけません」

 そうは言っても、多くの人は年齢に関係なく性欲を持ち、とくに若い年代層はセックスを求める頻度が高くなる傾向がある。コンドームがエイズ・HIVを含む性感染症の予防策として完璧だと過信してはいけないものの、岩室医師はやはり性交時のコンドームの装着を推奨する。感染リスクを抑える目的だ。

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