ドローン対策は?G7広島サミットの現場を見て、元公安警察官が感じた警備の問題点

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、広島サミットの警備について聞いた。

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 5月3日未明、モスクワ中心部にある大統領府クレムリンに2機のドローンが飛来した。1機目はプーチン大統領の執務室がある旧元老院ビルの丸い屋根の上で爆発。2機目は同じ屋根に衝突し炎上した。

「これで、改めてドローンの怖さが実証されました」

 と語るのは、勝丸氏。

「そのため警察庁は、広島サミットでのドローン対策を徹底していると思われます」

 5月19日から21日にかけ、グランドプリンスホテル広島で開催されるG7広島サミットでは、各国首脳への警護が最大の懸案事項だ。4月15日には、和歌山市で岸田文雄首相が襲撃されたばかり。警察庁も要人警護に徹底した対策を講じているとみられる。

史上最大の警察官

「4月4日、露木康浩警察庁長官が会場となる広島のホテルを視察し、万全の体制で警備にあたるよう指示しました」

 サミットの会場になるグランスプリンスホテル広島は広島湾の宇品島にある。

「私は4月末に広島を訪れました。宇品島は海に突き出た島なので、3方が海に囲まれていて警備はやりやすいと思います。もっとも、例えば会場内で爆発などのハプニングが起こったとき出口は1カ所しかありません。その過程でスナイパーに狙われる可能性があります」

 2008年の洞爺湖サミットでは2万1000人、16年の伊勢志摩サミットでは2万3000人の警察官が動員された。今回は伊勢志摩サミットを超える史上最大の警察官を配備する予定という。

「すでに3月より全国から警察官が派遣されています。宇品島へ入る道は暁橋だけで、ここからホテル入り口まではVIP警備に慣れている警視庁の警察官を配備しています。見晴らしを良くするために、沿道の木を伐採していました。ホテルは浜辺に面していますが、海から浜辺へ侵入できないように、鉄のネットを張り巡らせていました。ただ、岸壁となっているところはネットを張っていませんでした」

 宇品島には、一般の住宅や事業所もある。

「島の住民は、サミット期間中でも暁橋を通る必要があるでしょう。その場合どうするのかを広島県警に聞いたところ、住民パスを発行するそうです。偽造されないように対策を立てるべきですね。顔写真付きのものであれば良いのですが……」

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