「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点

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防衛予算の問題点

 そのため陸上自衛隊も、UH-1からUH-60に切り替えようとしている。ところが、1995年に着手され約30年が経過したにもかかわらず、UH-60JAは40機しか稼働していない。

「対照的なのがフィリピン国防省です。2020年から21年にかけて計16機のUH-60を導入し、その高性能を確認すると、22年には32機の追加購入に踏み切りました。たった2年間で48機を導入したわけです。一方、日本の陸上自衛隊は30年で40機です。どれだけペースが遅いかは一目瞭然でしょう」(同・関係者)

“まとめ買い”を行えば、業者が“サービス”してくれるのは軍需産業も変わらない。UH-60を大量購入すれば、1機あたりの値段は下げてくれる。

「さらにフィリピン国防省は、輸送や医療に使うUH-60には高性能のセンサーや特殊なレーダーといった“オプション”は付けません。迅速な購入計画で自軍の作戦能力を大幅に高めただけでなく、予算の削減まで実現したのです。ところが日本の場合、UH-60JAの整備に振り分けられる毎年の予算は決まっています。おまけに“フルオプション”によるライセンス生産が原則なので、1機あたりの価格は高止まりします。自国生産にメリットがあるのは否定しませんが、約30年で40機という信じられないスローペースになってしまいました」(同・関係者)

整備の問題

 戦後、革新陣営が発言力を持っていたこともあり、自衛隊がフル活動することは珍しかった。だが今では、米軍と共同訓練を日常的に行い、震災が発生すれば被災地に出動するのが当たり前の光景となっている。

「ヘリに限らず飛行機は、どんなに入念に整備しても、飛行時間に比例して不具合が発生します。所有機数が多ければ、1機あたりの飛行時間が減るため、故障も減少します。しかし、機数が少なければ、1機あたりの飛行時間は増えて、故障も必ず増加するのです。そして陸上自衛隊のUH-60JAは、高性能で使い勝手がいいため、わずか40機が延々とフル稼働しています。これは非常に危険な状況だと言えます」(同・関係者)

 2011年の東日本大震災、14年の御嶽山噴火、15年の常総水害──UH-60JAは常に被災地の最前線で働き続けた。多くの住民を救出する様子がテレビに映し出されたのは記憶に新しい。

「ヘリの耐用年数は飛行時間で決まります。当初の想定以上に飛行時間が増加し、酷使に悲鳴を上げている機体は少なくありません。機体の不具合や飛行時間の超過で演習などに参加出来ないUH60JAも出ており、現場では憂慮されています。もっと防衛予算の使い方を柔軟にしないと、この問題は解決できないでしょう」(同・関係者)

 ヘリの更新が進まないため、陸上自衛隊では保有する機種が増えている。これが整備の現場に悪影響を与えているという。

「現在、アメリカ陸軍が保有するヘリは、基本、UH-60、AH64、CH-47の3タイプに集約されています。ところが陸上自衛隊は、UH-1Jや60JAを筆頭にAH-1Sと64Dなど、7タイプを運用しているのです。アメリカ陸軍が保有していないオスプレイも陸上自衛隊は使わされています。整備するヘリの種類が多いほど、交換部品の管理や整備情報の共有が大変になるのは言うまでもありません。おまけに自衛隊は、整備士の勤務環境が決して良好ではないのです」(同・関係者)

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