日本のエース「山本由伸」、元大リーガーが「メジャーで確実に成功する」と太鼓判を押す理由

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「ファストボールは球威があって、“スニーキー”だ」

 2年連続で沢村賞&MVPに輝いた昨季終了後の契約更改でメジャーリーグへの移籍を訴え、今オフにポスティングシステムによる移籍が噂されるオリックスの山本由伸。24歳にして日本球界を席巻する右腕投手の実力を、実際に対戦した“元メジャーリーガー”はどう感じているのだろうか。【中島大輔/スポーツライター】

「彼は本当にいいピッチャーだ。いつメジャーに行くかはわからないが、そのときが来れば確実に成功を収めるだろう」

 そう太鼓判を押すのが、今季西武に入団したアメリカ人右打者のデビッド・マキノンだ。プロ6年目の昨季、エンゼルスで初のメジャー昇格を果たして大谷翔平とともにプレーし、シーズン途中にアスレチックスへと移籍。今年来日し、西武の主軸として勝負強い打撃を見せている。

 山本とは4月22日、5月6日に京セラドームで顔を合わせ、2度目の対決ではレフトに2ラン本塁打を放った。初対戦で4打数1安打に終わった後、打席での印象についてマキノンはこう話している。

「山本はいい球種を3つ(ストレート、フォーク、カーブ)持っていると感じた。ファストボール(速球)は100マイル(160km/h)出るわけではないが、球威がある。かつ、“スニーキー(sneaky)”だ」

 この「スニーキー」という表現にこそ、打者にとっての山本の厄介さが込められている。

 一般的には「卑劣な」という意味で、良くない文脈で用いられる言葉だが、野球では褒め言葉として使われる場合が多い。そう教えてくれたのが、同じくメジャー経験を持つアメリカ人で、昨季西武に加わった左腕投手のディートリック・エンスだ。

「野球で『スニーキー』というときは、見た目より対処するのが難しいという意味合いで使う。実際の球速より、バッターが速く感じるようなボールのことだ。『デセプティブ(deceptive)』という表現も使う。ボールの出どころの見にくいフォームから、いきなりボールが来るようなイメージだね」

“タイミングをいかに外すか”

 山本は今季、クイック投法のようなスライドステップに投げ方を変えた。まだ投球フォームをつくり上げている段階のためか、相手打者に打たれる場面は過去2年より多いが、うまくハマったときは打ちにくさを増している。その理由をマキノンが続ける。

「山本は“スニーキー”なワインドアップから投げてくるので、他のピッチャーとメカニクス(投げ方)が少し異なっている。だから、初めて対戦したときにはタイミングを合わせにくかった。4シーム(ストレート)も少しシュートしてくるから打ちにくい。フォークはファストボールと同じ軌道から落ちていくので、バットが出てしまう。この2球種を同じ軌道で使っていけば、さらにタフな相手になるだろう」

 投手にとって見た目の球速は大事だが、打者を打ち取るには“タイミングをいかに外すか”というテクニックも重要になる。それがボールの出どころの見にくさや、ストレートとフォークの軌道をうまく使って惑わせる投球術などで、英語では「スニーキー」や「デセプティブ」という表現が用いられる。

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