Z世代にハマるロッテ「吉井監督」の“見守り戦術” 混戦パ・リーグを制する可能性も出てきた

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「教える」というより「見守る」

 吉井監督が自主性を重視する背景には、自身の現役生活も大きく影響しているようだ。自著などで明かしているが、キャリアをスタートさせた近鉄バファローズ時代に“根性論”で指導してきた先輩もいたという。

 引退後に筑波大学大学院でコーチング理論を研究したのもその影響だろう。ヤクルト時代の恩師・野村克也氏が「投手のなかで、もっとも練習しているのは吉井」と話していたこともある。

「指導者になってからは『教える』というよりも『見守っている』感じ。日米複数球団を渡り歩いた人ですから、技術的なことも教えられます。でも、教えすぎると自分の複製を作ってしまうし、また、その指導内容が合う人と合わない人がいると捉えています。選手には『いっしょに考えよう』と伝えています」(前出・関係者)

 その伝え方も巧い。新加入のメルセデス(29)には「打者20人を目安に投げてくれ」と伝えている。巨人時代のメルセデスは通算29勝を挙げたが、スタミナ不足を克服できなかった。「6イニング目で突然崩れる」「80球を超えたあたりから」と言われてきたが、試合展開によっては、5イニング目で80球を超えるときもあれば、60球程度で責任イニングを投げ切る場合もある。

「打者20人とは、20個のアウトを取るということ。スタミナ不足を克服するための体力強化を図るよりも、打ち損じを誘うなどの投球テクニックを考えてくれと伝えたわけです」(前出・同)

 吉井監督は順位(11日現在、2位)のことを聞かれると、「まだ早い」と笑うが、「無理をさせない」のは終盤戦に備えるためでもある。守護神も今年は固定せず、益田直也(33)と沢村拓一(35)を日替わりで使ってきた。荻野貴司(37)、高部瑛斗(25)、山口航輝(22)など主力を欠いているが、手応えを感じているのではないだろうか。

 昨年10月の監督就任会見で、河合克美球団オーナー代行兼社長(70=当時)は「2025年に常勝軍団になっていくビジョンのもとに」と、吉井監督に就任要請した理由を語っていた。

 選手に考えさせ、体力を温存させていく采配により、目標達成の年が前倒しされるかもしれない。

デイリー新潮編集部

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