「スマホ依存」で子供の眼球が変形? 10人に1人が失明予備軍との試算も スマホ失明から身を守る方法

ドクター新潮 ライフ

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 身近すぎるがゆえに、病気という認識すら薄れてしまった「近視」。しかしその状況はスマホの登場によって一変した。眼科医・川本晃司氏が行動経済学の視点から警鐘を鳴らす「スマホ失明」。子どもを失明の危険から守るため、大人たちにできることはあるのか。

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 スマホで失明だなんて大げさな……。

 これまで「スマホ失明」の危険性を説明するたびに、幾度となくこう言いたげな反応に接してきました。

「スマホ失明」とは、読んで字のごとく、スマホの使い過ぎが原因で失明してしまうこと。もう少し丁寧に説明すると、スマホの使い過ぎによって遠くのものが見づらくなる「近視」などを引き起こし、その症状が進んで失明にまで至ってしまうことを指します。

 後で詳しくお話ししますが、実は、日本はこの「スマホ失明」対策においてかなりの後進国。欧米などでは国を挙げて対策に取り組んでいるところも多いのですが、日本では政府も国民も未だに“そんな大げさな”という態度です。おそらく根底には「どうせ近視が少し進むくらいだろう」と“目の悪さ”を軽く見る姿勢があるのでしょう。

成長期が終わっても近視が悪化する?

 ところが最新の研究によって、従来、成長期の終わりとともに進行が止まると考えられてきた近視が、その後も悪化し続け、「失明」にまで至る可能性があることが分かってきました。近視が進行すると眼球が変形する病的近視という症状が起こることがあり、これにより眼球の組織が破れたり視神経が圧迫されたりすることがあるのです。その結果、さまざまな目の病気を発症して失明に至ってしまう。

 失明という最悪の結果をもたらしかねない「近視」ですが、ここ数年の間にまるでパンデミックのような勢いで近視患者が増え続けています。背景にスマホなどのデジタルデバイスの爆発的な普及があるのは明白です。

 オーストラリアのブライアン・ホールデン視覚研究所によれば、2010年に20億人だった世界の近視人口は50年になんと50億人にまで膨らむ見込みだといいます。さらに同研究所はそのうち9億3800万人が失明を引き起こしかねない強度近視になるとまで予測している。50年には世界人口が100億人に達するといわれていますから、実に10人に1人の割合で失明予備軍が誕生するのです。

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