20代の約5割が「孤独を感じている」と回答 「1日15本のたばこと同じ健康被害」という報告も

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 輸入雑貨商を営む井之頭五郎は一人ぼっちで外食をするのが日々の楽しみだ。初めて入った店で、あれこれ想像を巡らせ、出てきた食事を堪能する。人気漫画「孤独のグルメ」は、一人でいることの喜びを描いているが、国からすると、これは“問題”らしい。

「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」の結果を政府が公表したのは3月31日のこと。担当しているのは内閣官房の「孤独・孤立対策担当室」だ。調査は昨年12月に行われ、対象となったのは2万人である。

〈あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか〉

 など四つの項目について答えるというものだが、常に・時々・たまに孤独を感じると答えた人が全体の40.3%を占め、年代別では20代が47.9%と全世代でもっとも大きいことが分かったという。また、全国には孤独・孤立解消を手助けするNPOがあるが、“常に”と答えた人の4割が、支援の受け方が分からないとしている。

「孤独・孤立対策担当室」に聞いてみた。

「この全国調査は一昨年から行っており、今回で2回目になります。まずは実態を知ろうと始めたものですが、孤独感を募らせている若者が多いのは意外でした。社会人になり職場など新しい環境でうまくコミュニケーションが取れないといったことが考えられますが、本当の理由についてはさらなる調査が必要です」(担当者)

イギリスでは「孤独担当大臣」が

 同担当室が発足したのは2021年2月。当時はコロナ禍の真っ最中で、外出自粛などからくる自殺やうつが社会問題になっていた。菅義偉総理(当時)が音頭をとって担当大臣が設けられ、現在では3代目(小倉將信氏)になる。

 が、孤独の感じ方は人によりけり。冒頭の「孤独のグルメ」だけでなく、群れることをよしとしない文学作品もあまたある。そもそも政治や行政になじむような問題なのだろうか。

 再び担当室の話。

「いえ、イギリスでは18年に孤独担当大臣が世界で初めて設けられましたが、同国では“孤独は1日にタバコ15本を吸ったのと同じぐらいの健康被害がある”という調査報告があります。その意味では、国民全体の健康にも関係しているといえる。政府では調査の他にNPOと組んで官民連携のプラットフォームを作っていますが、目下“孤独・孤立対策推進法案”を国会で審議していただいているところです」(同)

 政治アナリストの伊藤惇夫氏が言うのだ。

「政府が孤独・孤立対策に乗り出したのは、コロナ対策をアピールすることが目的だったのでしょう。最近になって岸田総理が急に花粉症対策を言い出したのとあまり変わりません」

 ちなみに小倉大臣は他にも「少子化対策」や「若者活躍」など兼務が七つ。忙しすぎて孤独を憂えている暇はなさそうだ。

週刊新潮 2023年4月27日号掲載

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