カンボジアで拘束された特殊詐欺グループが、現地の日本人コミュニティで有名だったワケ【元公安警察官の証言】

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、カンボジアを拠点にしていた特殊詐欺グループについて聞いた。

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 1月末、カンボジア第2の都市、シアヌークビルを拠点にしていた日本の特殊詐欺グループ19人がカンボジア警察によって身柄を拘束された。詐欺グループは25歳から55歳までの日本人男性で、全てかけ子だった。特定危険指定暴力団・工藤会の関係者も含まれていたという。

 警視庁は4月10日、50人の捜査員をカンボジアに派遣。翌日、19人を日本へ向かうチャーター機内で逮捕した。

怪しい日本人グループ

「実を言うと、私は19人がカンボジア警察に拘束される少し前にカンボジアを訪れていました」

 と語るのは、勝丸氏。

「目的は、カンボジアで仕事をしている日本人ビジネスマンに生活する上での注意点など、セキュリティに関する研修を行うためでした。その際、以前駐日カンボジア大使館に勤務していた外交官や現地の日本人から、シアヌークビルのリゾートホテルに、怪しい日本人グループが滞在しているという話を聞かされていました」

 カンボジアの南部に位置するシアヌークビルは、首都プノンペンから200キロほどの距離にある。最近は中国資本が流入し、高級ホテルやカジノが林立している。

「シアヌークビルは、美しいビーチのあるカンボジア唯一のリゾート地で、日本人の観光客も大勢訪れます。ビーチや街中で数人の日本人男性が日本人のビジネスマンや観光客を見つけると声をかけていた。彼らこそ、今回逮捕された詐欺グループの男たちだったんです」

 彼らは遊び人風でラフな格好をしていたという。

「とにかく、まともな仕事をしている人ではないような雰囲気で、暴力団関係者じゃないかと指摘する人もいました。カンボジアの日本人のコミュニティでも、かなり話題になっていたそうです」

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