飲酒が原因で死亡するロシア兵が増加中 他の軍隊には理解不能な兵士と指揮官たちの心理状態

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 イギリス国防省の公式Twitterは4月2日、ウクライナ情勢に関する最新情報を発表した。ロシア軍の死傷者に関するもので、その驚くべき内容に世界の主要メディアが相次いで記事を配信した。一体、何が書いてあったのか。

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 国防省がTwitterに投稿した「INTELLIGENCE UPDATE」を翻訳してみよう。

◆ウクライナへの本格的な侵攻以来、ロシア軍は最大で20万人の死傷者を出した。戦闘以外の原因で死傷した者は極めて少ない。

◆2023年3月27日、メッセージアプリ「テレグラム(Telegram)」のロシア・ニュースチャンネルは、ウクライナに展開するロシア軍部隊でアルコールを原因とする事件や犯罪、死者の発生が“非常に多い”と報じた。

◆戦闘以外の死傷者はおそらく、武器訓練の不足、交通事故、低体温症など気候による健康被害といった原因が考えられる。ロシア軍の司令官が「軍隊でアルコール濫用が蔓延し戦闘効率に悪影響を与えている」と認識している可能性は高い。しかし、ロシア社会では大量飲酒が広く行き渡っているため、たとえ戦闘中であっても飲酒は軍隊生活の一部として黙認されてきたようだ。

 ツイートを読んだ誰もが驚いたはずだが、メディアも同じだった。イギリスのデイリー・テレグラフ、アメリカのビジネスインサイダー、ニューズウィーク、韓国の中央日報、わが国では朝日新聞やテレビ朝日など、様々な報道機関が相次いでネット上に記事を配信した。

海軍と陸軍の違い

 軍事ジャーナリストは「そもそも、戦闘で20万人の死傷者が出た、というだけでも異常事態です」と言う。

「イギリス国防省のツイートに目を通しましたが、まずは死傷者の多さに驚いたというニュアンスを感じ取りました。例えば2003年のイラク戦争で、イラン軍の戦死者は約1万人と分析されています。ロシア軍は今回、1年間で10万人単位という桁違いの死傷者を出し、その原因として飲酒が多大な影響を及ぼしているというわけです。専門家でさえ衝撃を受けた発表だったと言えるでしょう」

 戦史を振り返れば、士気高揚を目的として軍隊が酒を活用した時代があったのは確かだ。とはいえ、いつでもどこでも呑めたわけではない。

「まず海軍と陸軍で明確に違います。軍艦は輸送能力が高いので、重い酒瓶も積み込むことができました。酒の効用を認めていたイギリス海軍の場合、飲酒しながら主砲や対空火器を操作して敵軍艦や戦闘機と戦う水兵の記録が残っています。一方、陸軍は後方の安全な場所なら酒を呑むこともありました。しかし最前線となると、酒はなかなか手に入らなかったようです。アルコールを補給する余裕があるくらいなら、1発でも多くの銃弾や砲弾を運ぶほうが重要であることは言うまでもないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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