“奇跡のフォント”で小学生の正答率に差 開発者が語る「UDデジタル教科書体」の驚くべき効果とは

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 ロービジョン(弱視)や学習障害のひとつであるディスレクシア(読み書き障害)の人でも読みやすい「UDフォント」をご存じだろうか。UDとはユニバーサルデザイン(Universal Design)の略で、障害がある人に優しいだけではなく、そうでない人にも読む速さの向上や疲労感の軽減の効果が期待できる書体である。『奇跡のフォント 教科書が読めない子どもを知って-UDデジタル教科書体 開発物語』(時事通信社)を3月23日に上梓した書体デザイナーの高田裕美さんに話を聞いた。

新たなフォントが続々開発

 日々目にするさまざまな文章だが、そのフォント(書体デザイン)が何なのかを意識している人は少ないかもしれない。例えば、Yahoo!ニュースでは、デフォルトの設定でメイリオという書体が使われている。

「明朝体やゴシック体だけで、それぞれ数百種類ものデザインがあります」

 と明かすのは、1985年から書体デザイナーとして活躍してきた高田裕美さんである。高田さんは、デジタルフォントの開発などを手がける株式会社モリサワでは教育現場における書体の重要性や役割を普及、推進する活動を行ってきた。

 書体デザイナーとはどんな仕事なのか。

「市場のニーズに合わせて書体を開発していますが、様々なクライアントから要望を受けて開発することもあります。例えばある時は、新聞社から読みやすいフォントのデザインの依頼がありました。読者が高齢化する中で、これまでの書体では読みにくいという人が増えたのでしょう。要望に応えるために、書体デザイナーは横線を太くするなど読みやすい工夫のアイデアを出します。実機を使って新聞紙に印刷したときの見え方も考慮した上で、一文字一文字デザインし、新聞社に提供しました。また後に、一般的なセットにまとめ、新たな新聞書体として発売しました」

 このように用途や目的に合わせて、様々なフォントが生み出されているという。

「分かりやすい例で言うと、アナログな印刷物の時代からパソコンやタブレット、スマホの表示など、デジタルでの配信へと変わるにあたって、文字は縦組みから横組みが基本になりました。そうすると、横組みに合わせた文字のバランスを考慮したフォントが新たに必要です。さらに、紙で読むのか、画面に表示されたものを読むのかといった違いで、読みやすいフォントは異なります。ですので、文字を読む環境が変わるにつれて、今後も新たなフォントはどんどん開発されていくと思います」

 モリサワ広報宣伝課に、現在販売されている書体の数を聞くと、

「毎年、数十から数百書体をリリースしています。全書体が使い放題のサブスクリプションサービスや使う書体の種類だけを選んで利用できるパッケージ製品という形で、主にデザイナー向けに販売しています。現在販売している書体の数は、1500書体以上です。また、教育機関や自治体向けに55書体が使えるサブスクリプションサービスもあります」

次ページ:横線が細く読みづらい

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[1/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。