【論点整理】放送法の解釈論争で立憲民主党の苦しい言い分 「高市早苗」捏造文書論争の論点3つを冷静に検討

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放送法の解釈論争とは

 3月3日の小西洋之参議院議員(立憲民主党)の「爆弾質問」以来、国会の内外でも注目を集め続けている総務省の「捏造文書問題」。いささか混乱しているようにも見える論争の論点を客観的に整理したらどうなるか。

 ここで扱う論点は3つ。

(1)小西氏が持ち出した総務省の文書は「捏造」なのか。
(2)高市氏は総務大臣時代に、放送法の解釈を変えて政府が放送局に圧力をかけやすくしたのか。
(3)小西議員が文書を入手するプロセスに問題はないのか。ここで

(1)については前回触れたので、今回は(2)(3)の検討である。
(全2回の2回目)

 ***

 今回は、(2)高市氏は総務大臣時代に、放送法の解釈を変えて政府が放送局に圧力をかけやすくしたのか、から見てみよう。

 ここで問題になっているのが、放送法第4条の解釈である。

「第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。 二 政治的に公平であること。 三 報道は事実をまげないですること。 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。」

今に始まった議論ではない

 この第4条に放送局が違反した場合、国が取り得る最大のペナルティーは「業務停止」、つまり放送ができないようにしてしまうというものである。

 その根拠は、放送法の174条で、次のように書かれている。

「総務大臣は、放送事業者(特定地上基幹放送事業者を除く。)がこの法律又はこの法律に基づく命令若しくは処分に違反したときは、三月以内の期間を定めて、放送の業務の停止を命ずることができる。」

 つまり論理的には、第4条に違反したら総務大臣が「放送業務の停止」を命令できるということになる。

 そして「事実と異なる放送」や「公序良俗に反する放送」がNGだというのはわかりやすい。わかりにくいのは、「二」「四」で「どんな時に”政治的に公平”ではないと判断するのか」「意見が対立している問題ってなんだ」というような疑問がでてくる。

 立憲民主党などは、2015~16年頃、高市氏が総務大臣だった時期に、この判断の基準が変えられたのが問題だと従来から主張してきた。

 今に始まったことではなく、高市総務大臣時代に国会で何度も取り上げられているテーマだ。

杉尾議員VS高市大臣

 大ざっぱにいえば、従来の基準(政府の解釈)では、「一つの番組が公平ではないからといって、即、(その局が放送する)番組全体が不公平だという判断にはならない。(だから簡単に業務停止なんかできない)」というものだった。

 これに対して、立憲民主党の主張は丸めると以下の通りである。

「高市大臣は、1つの番組だけでも『公平ではない』という判断ができるという解釈を述べている。これは解釈の重大な変更であり、言論弾圧に直結する」

 これに対して高市総務大臣は、「(その局の)番組全体といっても、それは1つ1つの番組が合わさったものだろう。ただし、政府の解釈は以前と同じで変わっていない」という説明を繰り返してきた。

 何だか抽象的に思われるかもしれないので、実際のやり取りを見てみよう。

 2016年10月11日の参議院総務委員会で質問に立った杉尾秀哉議員が次のように質している。杉尾議員は元TBS局員である。

「これまでは放送法の四条について番組全体で判断すると、こういう考え方が定着していたわけですけれども、高市大臣は1つの番組だけで判断する可能性に触れられている。さらに、ここに行政指導、注意とかですね、それから停波というものをちらつかせられると、これ放送業者にとっては極めて脅威となる。

 私は(放送業界に)いたから実感としてあるんですけれども、こういう(脅威だという)受け止め方についてはいかがでしょうか」

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