なぜ最近のアスリートは「引退」という言葉を拒絶? 記者は「モヤッした表現しかできない」と困り顔

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「柔道で五輪を連覇した大野将平(31)が3月7日に会見を行ったんですけど、記事を書くのが大変でしたよ」

 と明かすのはスポーツ紙五輪担当記者である。

「『パリ五輪は目指さない』と明言し、指導者育成研修のためイギリスに留学すると発表したんです。普通に考えれば、これって“引退”ですよね。でも本人は『柔道家に引退はない』と言い張るんです」

 近頃、“引退”という言葉を使われることに拒絶反応を示すアスリートが増えている。

 重量挙げで五輪に3度出場した八木かなえ(30)もその一人。4月から母校である金沢学院大の助教とウエイトリフティング部コーチに就任するのだが、やはり引退ではないのだとか。

「モヤッとした記事を配信する羽目に」という声も

 同じく五輪連覇のフィギュアスケーター、羽生結弦(28)に至っては“引退”を巡り炎上騒ぎに発展した。

「昨年7月19日の会見当日未明、日刊スポーツがネット上で“羽生結弦引退”とすっぱ抜くも、ファンから『本人の口から聞きたいのに』などと批判が噴出。しかも会見で羽生が『高校野球を頑張っていた選手が甲子園で優勝してプロになった。それは引退かと言われたら、そんなことはない』と、独特の言い回しで引退を否定したものだから、『誤報だ』と再炎上しました」

 引退という言葉が使えない引退――そんな時に重宝されるのが“一線を退く”という言い回しだ。結局、羽生や八木も、記事の大方がこの表現を用いた。

 ところが、

「大野は『“引退”とか“一線を退く”とか、小さな枠組みで捉えてほしくない。終わりみたいな雰囲気になると悲しくなってしまう』と。“一線を退く”まで使えなくなってしまったら、いったい何をどう伝えたらいいのやら。結局、各社とも“イギリス留学会見”みたいなモヤッとした記事を配信する羽目になってしまいました」

週刊新潮 2023年3月30日号掲載

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