「あなたは痴漢。300万円払え!」アジアの外交官に示談金を請求した女性の正体【元公安警察官の証言】

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大使館に押しかける

 外交官と女性との間では示談交渉は進んでいたが、まだ念書は交わしていなかった。

「私は、外交官に『あなたは故意に触ったのでなければ、堂々とすべきです』と伝えました。彼はこのことが日本の外務省に知れて、ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物として国外追放処分になる)を恐れていました。そこで、今度女性から電話がかかってきたら会話を録音するよう指示しました」

 その後、女性から外交官へ連絡があったという。

「女性は『示談金をいつ払ってくれるの。払わないなら大使館に押しかけるわよ。マスコミにもバラすから』と言ってきました。これは明らかに脅迫です」

 そこで勝丸氏は、外交官の友人を名乗り、女性の携帯に電話した。

「私は女性に『あなたがやっていることは脅迫になる。外交官との会話を録音しています。このままだと留置所に行くことになりますよ。他にもこうやって脅したことがあるんじゃないのか』と強く言うと、いきなり電話が切れて、以後、彼女が外交官へ連絡することはなくなりました」

 勝丸氏によれば、日本は海外に比べ、女性の胸やお尻にちょっと触れただけで痴漢と見なされ、警察に身柄を拘束されることが多い。外国の外交官は、そういう日本の事情を理解していない人が少なくないという。

「オセアニアの駐日大使館に勤務する外交官からも、痴漢に間違われたという相談を受けたことがあります。電車に乗っていて、吊革から手を離した時、たまたま女性の胸に触れてしまったそうです。彼は故意に触ったのではないと主張しました。女性は一般の人でしたが、誠意を示して欲しいと言われ、結局、私が弁護士を紹介して示談にしました。日本にいる外交官には、電車の中などでは特に注意するようアドバイスしています」

 ところで、先のアジアの外交官はその後どうなった?

「トラブルが解決したことで、私には頭が上がらなくなりました。その後は貴重な情報を提供してもらいました。彼が任期を終えて帰国するときは、高級フレンチレストランに招待してくれましたね」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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