ソフトバンク、球界初「4軍制」が本格始動 「第2の千賀」を生む土壌へ…“二刀流”に挑戦する選手も登場

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新たな“伸びしろ”をどこに見出すか

 そうした“登録外のポジション”での起用法について、永井智浩・球団統括本部編成育成本部長は「どちらの可能性もあるうちは、探りながらやっていこうというのでいいんじゃないかと思っています」とその狙いを明かしてくれた。

「もともと、大谷(翔平、現・エンゼルス)みたいな形にしたいというプランじゃなくて、彼らの持っている能力で投手でも野手でも、どちらでも成功する確率を上げてやりたい。どこかで(方向が)見えてきたら片方に絞り込んでいく。それで全然構わないと思っています。石塚の場合も、打撃でいえば育成で今、一番いい。でも、キャッチャーでいえば、守備面でじゃあ、2軍のマスクをかぶれるかというと、まだそのレベルに来ていない。キャッチャーとして足踏みしているときに、他のポジションでも、もしかしたらバッティングなら勝負できるんじゃないかと。その可能性というのは、置いておいてやりたいんです」

 永井本部長が語るように、若い選手たちの新たな可能性を見出していくための実戦機会を作り出せることこそ、3軍、4軍という育成に特化した場を設ける、最大のメリットだろう。新たな“伸びしろ”をどこに見出していくのか。固定観念やポジションへのこだわりを捨て、複数ポジション、あるいは投打の二刀流にチャレンジしていく。

 ただ3軍、4軍の“待遇”は、決して甘いものではない。「薩摩おいどんカップ」の試合中も、グラウンド整備のために、選手たちが自らトンボを持ち、12日の試合後は即、鹿児島・姶良市から全員がバスに乗り込んで、福岡・筑後市まで帰っていった。

 こうした厳しい環境の中から、いかにしてはい上がってくるのか。「まだ僕らも手探りなんです。これをアップデートしながら、ですね」と永井本部長。日本球界初の「4軍制」で“第2の千賀、甲斐、牧原”を生み出すための、また新たな態勢と土壌をソフトバンクは作りだそうとしているのだ。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)。

デイリー新潮編集部

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