夏春連覇を目指す「仙台育英」須江航監督がセンバツで見せた“好采配” 昨夏「青春は密」発言で話題

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「彼が一番良かったから先発を任せました」

 3月21日に行われた選抜高校野球大会4日目の第3試合で、昨年の「夏の甲子園」を制した仙台育英(宮城)が、延長10回タイブレークの末に慶応(神奈川)を2-1のサヨナラ勝ちで下し、「夏春連覇」に向けて一歩前進した。【西尾典文/野球ライター】

 今年の仙台育英の強みは、高橋煌稀、湯田統真、仁田陽翔(いずれも新3年)というプロ注目の3人の投手を中心とした守りだ。結果をみると、延長10回、1点で抑えて守り勝ったといえる。だが、実際の試合内容は、立ち上がりから度々ピンチを招き、仙台育英にとっては、守備の時間が非常に長く、苦しい展開だった。

 大きな誤算は、先発マウンドを託された仁田だった。1回に先頭打者にいきなりストレートの四球を与えて、立ち上がりからボールが先行する。2回にもヒットと四球、死球でワンアウト満塁のピンチを招いたところで、早くも高橋にマウンドを譲った。

 仁田は3投手の中で、最も早くから評判になっていた本格派左腕だ。腰を痛めて、昨年の「夏の甲子園」ではわずかな登板にとどまっており、秋の公式戦での投球回数も3人のなかで最も少ない。一見、ギャンブルに思える起用だが、仙台育英の須江航監督は、その理由を以下のように語っている。

「仁田の先発は、チャレンジではありません。(これまでの練習試合などで)結果を出して、彼が一番良かったから先発を任せました。ただ、雨とか初戦の難しさとか、があったのかなとは思います。今後勝ち上がっていくためには、仁田の力が絶対に必要です」

プラン変更で試合の流れを引き戻す

 仙台育英は、チーム内でメンバーに選出される基準を明確に示しており、紅白戦や練習試合を多く組み、その結果から出場する選手を選んでいる。実際、仁田は、3月4日の神戸弘陵との練習試合では、7回を投げて無失点の好投を見せている。それを考えても、須江監督のコメントは、“本音”と言えそうだ。

 しかし、2回途中から継投に切り替えたことについては、試合前のプランからの変更があったという。

「試合開始前は4、5点くらいの(失点がある)展開だと思っていたので、仁田が失点しても交代させないつもりだったのですが、(慶応の先発投手の)小宅くん(小宅雅己)が、秋のいろんな映像を見た感じと比べて、明らかにワンランク上(の投球)だったんですね。これは点をとれても、1点か2点かなと思って、満塁の場面でしたが、高橋に交代させました」(須江監督)

 2回途中から登板した高橋は、すでに1回からブルペンで投球練習を始めていた。ワンアウト満塁から登板した高橋は、連続三振を奪い、無失点でピンチを切り抜けた。須江監督が、試合開始直後からプラン変更を決断し、早めに継投の準備に入らせたことで、相手に傾きかけた試合の流れを引き戻した。

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