ドラ1候補に暗雲か…大阪桐蔭エース「前田悠伍」、スカウト陣は「ストレートに力を感じず、肩透かしを食らった」と不満げ

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「高校生にしては十分高いレベルだが…」

 3月20日に行われた選抜高校野球大会3日目の第3試合、“世代ナンバーワン”といわれる大阪桐蔭(大阪)のエース、前田悠伍が登板した。強豪の敦賀気比(福井)を相手に、9回を1失点、自責点0、14奪三振の完投勝利を飾った。この数字だけを見ると期待通りのピッチングだったように感じるかもしれないが、現地甲子園で取材した筆者は、そこまでの“凄み”を感じなかった。【西尾典文/野球ライター】

 初回からいきなり2本のヒットを浴びるなど、被安打数は8を数え、その大半が完全にミートされていた。前田は、一昨年の明治神宮大会で、敦賀気比に対して、6回でヒットはわずかに2本、10三振を奪い、完全に抑え込んでいる。しかし、この日は、前田のボールに威力がない。特に、序盤のストレートは140キロを超えるボールが少ないうえ、高めに浮くケースが目立っていた。

 結局、この日の最速は142キロで、自己最速の148キロと比べると、かなり物足りない数字に終わった。セ・リーグ球団のスカウトは、残念そうな表情を浮かべて、こう語る。

「時々いいボールもありましたが、ストレートはあまり力を感じなかったというのが正直なところです。もちろん、高校生にしては十分高いレベルだと思います。ですが、(調子の悪かった)昨年の秋と比べても、それほど変わっていないように見えました。高校生は、冬の間に一気に伸びる選手が多いので、(この日の前田には)ちょっと肩透かしを食らったという印象です。(まだ3月なので)ここから調子が上がってくるかもしれませんが、もう少し力で圧倒するような投球を見せてほしかったですね……」

“抜く系”の縦の変化球が使える投手

 近年では、一昨年の選抜に出場した達孝太(天理→日本ハム)が前年までとは別人のような力強いストレートを投げ込み、スカウト陣の評価を大きく上げて、最終的にドラフト1位でプロ入りを果たしている。

 前田は、達とは全く異なるタイプだとはいえ、「最終学年の滑り出し」としては、低調だったという感は否めないだろう。

 その一方で高く評価できるポイントもあったという。パ・リーグ球団スカウトは以下のように前田を分析する。

「去年の夏くらいから、チェンジアップがなかなか決まらなかったことが気になっていましたが、今日(敦賀気比戦)は良い時のボールに戻っているように見えました。左右に関係なく、どちらの打者にも使えていましたし、三振が多く奪えたのも、チェンジアップが良かったからだと思います。今のプロで通用している左腕は、ほぼ例外なく、こういう“抜く系”の縦の変化球が使える投手で、前田は、その条件をすでにクリアしています。甲子園で勝ち抜くために、ある程度(力を)抜きながら投げていた部分もあるでしょう。相手に研究される中で、ちゃんと結果をするのは立派ですよ。プロでも“勝てるピッチャー”に慣れる要素を十分に持っていると思います」

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