「クローザー直訴」の大谷に折れたエ軍の代償 “二刀流”暴騰で決別不可避か

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渡米後に起用法の風向き変化

 風向きが変わったのは大谷が日本代表とともに準決勝に向け、渡米してからだった。大谷が準決勝を前にした3月19日に決勝に進んだ場合の登板に言及し「先発する可能性はないと思うが、もちろんリリーフで準備はしたい。球団は本当に僕のわがままな要望を聞いて、多くのことを許容してくれた。最後の最後なので体調と相談して決めたい」と語ったのだった。栗山監督は呼応するように翌日の準決勝前の記者会見で、決勝での大谷登板について「可能性はゼロではない」とトーンを変えた。

 前出の代理人が内幕を明かす。

「アメリカに戻り、大谷は代理人を通じ再度、エンゼルスに救援登板が可能かどうかを探った。エンゼルスは今オフの再契約を視野に入れており、大谷との関係に波を立てたくはない。最終的には1イニング限定ということで、大谷の強い熱意に球団側が折れる形になった。栗山さんは(3月18日に)大学での練習中に大谷と会話をし、記者から内容を問われた際に言葉を濁していたが、大谷から救援登板できることを伝えられたようだ」

 こうした経緯を経て、日本中を歓喜の渦に巻き込むことになる決勝での「抑え大谷」プランが固まった。

 大谷は二刀流が先発だけではなく、救援も可能であることを大一番で満天下に示した。試合後半、自らの出番に備え、ベンチから左翼後方のブルペンへ移動した。試合前には動線を確認していたという。その後、自身の打席が近づくと、息を切らしながら今度はブルペンからベンチへ。それでも、本人は「ホームサイド(左翼側)の方にブルペンがあったので、右翼側ではなく、それなりにやりやすかったので、問題なくできたかな」と平然としたもので「今後もこういうことがあるかも」と、MLBでの救援登板にも含みを持たせた。

エンゼルスの慰留の熱意は不透明

 一方のエンゼルスは皮肉にも大谷をサポートしたことで、決別の実現性を高めた。今季終了後にFAとなる大谷に対してはエンゼルスと同じ地元のドジャースやメッツなどが触手を伸ばし、契約総額はMLB史上最高額となり、6億ドル(約790億円)との米報道もある 。

「既に(2021、22年の)レギュラーシーズンで二刀流が成立することは証明していた。WBCで同じ短期決戦のポストシーズンでも切り札になり得ることを見せつけた。ワールドシリーズで世界一が懸かる場面で、大谷がクローザーで登板するイメージを描いた球団は少なくないだろう。FA後に大谷争奪戦になれば、より多くの球団から注目を集め、契約金が高騰することは間違いない。 エンゼルスはどこまで資金を投じるかが不透明で、昨季までのようにチームが早々と優勝争いから脱落し、他球団に資金力でかなわないと判断すれば、(今回のWBCの活躍で評価が上がり)より多くのプロスペクト(若手有望株)の獲得を望めるようになった大谷をトレードで放出するケースは十分に考えられる」(同代理人)

 大谷は3月30日のMLB開幕前にこれ以上ない形で弾みをつけ、エンゼルスとの契約最終年のシーズンに臨む。その活躍とともに去就からも目が離せない日々が始まる。

デイリー新潮編集部

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