加熱する日本人の“海外出稼ぎ”報道…「メディアが誇張しているのでは?」移住者たちから異論噴出

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カネか人生か? 海外移住の意味とは

 過熱する「出稼ぎ報道」には、ロコタビで広報PRを担当する岡慧隼さんも「違和感がある」という。

「『出稼ぎ』というワードを使って海外移住者を報道する昨今の状況には、少し違和感があります。いうならば彼らは、日本と海外を繋いでくれる大切な存在。そういう人たちがお金のために移り住んだという印象を日本国内で持たれるのは、ちょっと良くないなと」

 ロコタビが今回のアンケートを実施した目的もそこにあった。

「今回の調査で、収入を理由に海外移住する人はゼロだった一方、学びたい気持ちや仕事のクオリティ向上を理由とする人は少なからずいました。それを実現するために海外へ行くのはとても意味があるし、プラスも多い。海外移住は、『稼ぐ』という直接的な目的以上に、仕事や人生の幅を広げる意味で重要なのだという認識が、今回の調査結果を含めて広がっていくことを願います」

 また相次ぐ「出稼ぎ報道」の背景をこう分析する。

「1つは、賃金が増えない慢性的な労働環境問題への警鐘。もう1つは、日本人の海外進出促進。これは僕も賛成です。これらを報道するために、『海外は給料が高い』、『出稼ぎに行って海外経験するのはいい』と報じているのかなと」

 ただ、そうしたことを啓蒙するために“出稼ぎ”というワードを用いているとすれば、少し問題があるのではないかという。

「海外移住者を安易に『出稼ぎ』と紐づけ、彼らを『出稼ぎに行った人』だと思わせてしまう可能性がある。報じる側もそこは十分に考慮していただければと思います。また、海外移住で大切なのは、『その国へのリスペクト』。移住を希望する方は、その国の文化や習慣を受け入れ、日本と海外をより強くつないでいってほしいですね」

 海外移住によって自身の世界を広げた人々。”出稼ぎ“報道が注目される背景には、コロナ禍で誰もが閉塞感を抱いたことがあるだろう。海外移住という選択は今後も増えるだろうが、その理由はあくまでも千差万別だ。

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