NHK「大奥」で取り上げられているシリアスなテーマの数々…血縁主義、不妊問題に対する答えは?

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華やかなようで硬派作品

 評判高いNHK「ドラマ10 大奥」(火曜午後10時)が最終回を迎える。男女の役割が逆転するという奇想天外な時代劇が、どうしてウケたのか? そこには納得の理由がある。

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「大奥」は男女逆転下でのラブストーリー、なまめかしいエピソードが描かれているから、軽い作品と受け止めている向きもあるようだが、実際には違う。ご覧になっている方ならお分かりの通り、硬派作品にほかならない。

 シリアスな現代劇でも取り上げられることが稀な、重量感のある問題の数々が織り込まれている。その1つが宰相論だ。

 3代将軍・徳川家光(堀田真由・24)の時代から、男子のみ罹る不治の感染病・赤面疱瘡(あかづらほうそう)が広まった。それにより男子の人口は女子の4分の1にまで激減した。国難だ。

 そこで動いたのが8代将軍・吉宗(冨永愛・40)。史実でも「享保の改革」を行った名君だが、赤面克服に向けても陣頭指揮に当たる。

「なんとしてでも赤面を抑え込め!」(吉宗)

 吉宗は大奥出身で薬種問屋・田嶋屋の水野祐之進(中島裕翔・29)による調査を信じ、自らが設立した小石川御薬園の医師・小川笙船(片桐はいり・60)に対し、患者に猿の肝を飲ませるよう指示する。安全性が確認されていなかったが、素早く決断した。

「責めは私が負う」(吉宗)

 何も薬を飲ませなかったら、やがて確実に死んでしまう。人の命を第一に考えた。あらかじめ医師たちの責任にしないことも約束した。潔さ、頼もしさを感じさせた。あるべき宰相の姿の1つだろう。

 9代将軍となる家重(三浦透子・26)は吉宗の長女であるものの、周囲の大半が将軍は務まらないと見ていた。生まれつき発音に難があったことなどが理由だ。本人も後継者になることをあきらめ、自堕落な生活を送っていた。

 しかし、吉宗の考えは違った。家重と将棋をやり、先を見通す能力を確認した上で、「人の役に立ちたいと思えるか?」と尋ねた。それが将軍の資質で最も大切なものだと思っていたからだ。現代の望まれる宰相像とも重なり合うのではないか。

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