大川隆法氏の死去を「地方のミニシアター」が憂うるワケ 「幸福の科学」映画と業界の知られざる関係性

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グルグル回転菩薩

 幸福映画での信者の動員については、「週刊新潮」でもたびたび記事にしている。

《(※元信者)「名簿上、300人くらいが所属する支部を例にとると、支部長はだいたい3000万円分のチケットを捌くことを本部から要求されます。でも、それはプレッシャーをかける目的で、実質的なノルマはその半分。そこで、もし1000万円をクリアできないと、支部長は左遷される可能性があります」

 そのため、支部長は所属の信者に必死の売り込みを図るという。

「個人で1000万円以上のチケットを購入すると、教団内で“大黒天”として扱われます。大量のチケットを抱えた信者は、同じ劇場で、繰り返し繰り返し映画を鑑賞し続ける。その鑑賞法は、“グルグル回転菩薩”と呼ばれています。最初は、信心深く手を合わせてスクリーンを向いていても、だんだんと飽きてきて、大抵はウトウトしてしまいますけどね」》(2019年3月7日号「幸福の科学『清水富美加』“初主演”映画が満員御礼のカラクリ」より)

 ミニシアターの場合、1作品の上映回数は1日1回だけというところも多く“グルグル回転菩薩”は行われない。それでも「上映すれば確実に儲かる」幸福映画は、ミニシアターにとっても大切な収入源なのだ。

セット販売も

 別のミニシアターの関係者は、業界のツボを押さえた映画の展開方法にも感心する。

「シネコンは基本的にデジタルシネマで、DCP(デジタルシネマパッケージ)として上映されます。シネコンでの上映が終わった作品をミニシアターで公開することもあるわけですが、DCP上映に対応していない映画館も多い。専用のプロジェクターが高価ですし、プロジェクターとスクリーンに距離が必要なので映画館を改修しなくてはならない。画質が良いDCPしか用意しないという作品は上映を諦めるしかないのですが、幸福映画の場合、きちんとブルーレイ版も用意してくれる。ブルーレイの再生機さえあれば上映ができるわけです。シネコンでもミニシアターでも上映できるよう、DCPとブルーレイ、両方の素材を作っているのです」

 近年の幸福映画の配給元は主に日活だが、併せて東京テアトルが配給協力、あるいは単独で配給を担う作品もある。初期のアニメーション作品の配給元は東映だ。2022年に公開された幸福映画「呪い返し師―塩子誕生」と「愛国女子―紅武士道」の興行収入は、それぞれ7億7700万円と7億7300万円。日活の年間興収の6割強を占めている(「キネマ旬報」23年3月下旬特別号より)。

「興行収入が良く、しかも定期的に製作される幸福映画は、配給側としても“おいしい”。でも、『全国の200以上の劇場で公開する』みたいなノルマが課せられるんでしょうね。だから配給さんのほうから『幸福映画を上映してくれたら、こっちの人気作品をかけてもいいですよ』と持ちかけられることもあるんです。普通だったらミニシアターには配給してもらえないような、お客さんが呼べる作品です。要は幸福映画と“セット販売”ですね。また、普段は付き合いのない大手の配給から『幸福映画を上映しませんか』と連絡がきたというミニシアターもありました」

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