【放送法問題】先進国で政府がテレビを監視しているのは日本だけ…本来論じられるべき3つの問題

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政府が経営委員を選ぶ…NHKと政権の奇怪な関係

 第2に、放送法で規定されたNHKの統治システムが今のままで良いのかという問題である。

 放送法の「日本放送協会」についての定めにより、NHKは政権党にとって極めて都合の良い存在になっている。受信料を支払っている視聴者がオーナーであることが忘れられている。

 NHKの基本方針を決める12人の経営委員は政府が選び、それを国会が同意することになっている。しかし、政権党が国会の過半数を握っている限り、不同意はあり得ない。すんなり政府案で決まる。さらに会長は経営委員会が選ぶから、政権党は容易にNHKをコントロールできる。

 こんな公共放送が存在する先進国も存在しない。ちなみにBBCの場合、組織の方向性を決める理事会(14人)のうち、理事長と4人の地域担当理事は公平性を確保した上で、受信許可料を支払った市民の目に見える形で決められ、最終的には政府が任命する。

 トップの理事長は公募制だ。残り9人の理事はBBCが任命する。会長はBBCが任命した理事から選ぶ。この仕組みは理想が追求され続けており、定期的に見直されている。

 一方、政権党に首根っこを押さえられているNHKは、政権党内の権力者が交代すると、同局内も変わってしまう。

 デイリー新潮が3月7日に報じた通り、今年1月に就任した日銀元理事でNHK新会長の稲葉延雄氏(72)は、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸前会長(78)による改革を見直す方針である。全職員に対し、前田改革についての意見を募り始めた。

 トップが交代した途端、前任者の改革が見直されるのは前代未聞のことだ。株式会社だって極めて珍しい。背景にはNHKに最も強い影響力を持っていた安倍晋三元首相の死がある。

 安倍氏には経済人による応援団的組織「四季の会」が存在した。前田氏は同会のメンバーだった。会の中心人物は故葛西敬之・JR東海名誉会長で、「NHKのキングメーカー」とも呼ばれていた。安倍氏に会長人事を進言する立場にあったからである。

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