稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか

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NHKを国営放送にする案はなぜ「論外」?

 テレビ局の監督はほかの先進国のように独立放送規制機関が行う。米国にはFCC、英国にはOfcom、フランスにはCSAがある。これらの組織は政府から独立している。

 独立放送規制機関はテレビ局に対して強い権限を持つ一方、政治がテレビ局に介入することを許さない。テレビ局を厳正にチェックしながら、政治から守っている。米国のCBSや英国のBBCが厳しい政府批判が出来る背景には独立放送規制機関の存在がある。

 また、NHK経営委員を事実上政府が選び、それに国会が同意するという悪しき仕組みはあらためるほかない。会長は経営委員会が決めているから、オーナーは視聴者であるにも関わらず、運営権は政権党が握るという不可思議な状態が続いている。

 BBCの場合、経営委員会の代わりに、組織の方向性を決める理事会がある。経営委員の定員は12人だが、BBC理事会は14人。トップの理事長は公募制だ。理事長と4人の地域担当理事は公平性と透明性を確保した上で決められ、最終的には政府が任命する。残り9人の理事はBBCが任命する。会長はBBCが任命した理事から選ぶ。

 経営委員会と理事会はまるで仕組みが違う上、Ofcomがあるから、BBCは独立性が極めて高い。NHKも海外の公共放送に倣うべきだ。

 NHKを国営放送にするという案は論外だ。政権党の思う壺である。労せず受信料を徴収し、都合の良い主張を流せてしまうようになる。それもあり、国営放送の報道は海外で信用されない。

 海外の国営放送は中国の中国中央電視台、ロシアのロシア1、北朝鮮の朝鮮中央放送など。大掛かりな国営放送を持つのは社会主義国か旧社会主義国ばかりなのである。

 NHKを視聴者の手に届く存在にしない限り、いくら受信料を下げても視聴者側は納得しない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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