禁じ手破りの「クローザー大谷」の現実味 WBC栗山監督「いろんな意味の先発」のウラに妙案

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エ軍は“先発限定”とクギ

 野球の国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の栗山英樹監督(61)の大谷翔平(エンゼルス)の投手起用を巡る発言が臆測を呼んでいる。エンゼルスのフィル・ネビン監督が、キャンプ中の2月15日にWBCでの大谷の投手出場について「先発として投げるだろう。リリーフはしない」と語ったことを受け、日本のスポーツ・メディアによると、栗山監督は「こちらはお借りする(立場な)ので。言ってることはもちろん伝わっている。分かってます。というか、先発だけなんだね。でも、先発もいろんな意味の先発があるから。それ以上は言えない」と最後に意味深な発言をした。WBCでの大谷の起用法は覇権奪回に直結するテーマで、「いろんな意味の先発」の真意とは――。NPB関係者の間では栗山監督の妙手に期待する声も出ている。【球人ニキ(たまんちゅにき)/野球ライター】

 栗山監督には、日本人メジャーリーガーの宮崎合宿への参加に「待った」がかかったことに続き、またも大谷を巡って悩ましい問題に直面した。ネビン監督は冒頭の発言と同時に今季の開幕投手に指名したことを明かしており、「WBCでも大谷を先発以外で使うな」と言わんばかりだ。

 米大手マネジメント会社の代理人が指摘する。

「エンゼルスは昨季15勝した大谷に今季はエースとして大車輪の活躍を期待している。本来の中6日ではなく、昨季後半に規定投球回到達のため間隔を1日縮めた中5日のローテで、開幕から回す方針。昨季以上に打者より投手に比重を置くようだ。大谷は日本ハム時代にリリーフの経験があるとはいえ、不慣れなポジションで、故障でもされればかなわないということ。今季のチームの浮沈に関わるだけに、エンゼルスは大谷の先発での限定的な起用を譲らないだろう」

 しかし、そこはアイデア力に定評がある栗山監督だ。日本ハム監督時代にはMLB流の救援投手を先発登板させる「オープナー」や、極端な守備シフトをいち早く取り入れるなどした。それだけに「いろんな意味の先発」発言には、どこか抜け穴を探っているようにも聞こえる。

尽きない“抑え投手”への不安

「栗山監督には、先発と同様に、大谷の登板日、イニング数、球数を事前に決めた上で、投げる順番を最後にする考えがあるのではないか。例えば、決勝では山本(由伸=オリックス)に先発で4~5イニング、2番手には今永(昇太=DeNA)ら第2 先発グループから抜てきした投手に七回まで、そして八回以降は大谷に任せる。大谷は最初から出番が決まっている上にイニングの途中での登板も禁じ手にすれば、ブルペンで臨機応変に準備しなければならない負担は減る。投げる順番は1番目ではないが、最初にマウンドに上がる時間が決まっていないことを除けば、先発のルーティンとほとんど同じ。栗山監督がここを落としどころにすれば、エンゼルスの理解を得られるかもしれない」(WBC元日本代表コーチ)

 栗山監督は早くから大谷の救援起用をほのめかしていた。同監督は、ダルビッシュ有(パドレス)が「(役割は)何でもやります」と発言したことを明かしたのもリリーフ陣、特にクローザーへの不安が尽きないからだ。

 日本代表は大谷に加え、ダルビッシュ、山本、佐々木朗希(ロッテ)と世界でも屈指の先発陣に比べ、リリーフ陣は力不足が否めない。特にクローザー候補は松井裕樹(楽天)、大勢(巨人)、栗林良吏(広島)らが絶対的な存在になり得るかどうか不透明である。

「大会を勝ち進むにつれ、松井や栗林らの中から抑えが確立できれば理想的。しかし、彼らの状態が上がってこないことも想定しないといけない。実際に(優勝した)2009年も藤川(球児)が不調で、準決勝以降はダルが救援に回った。国際大会で抑えの確立は課題として付きまとってきただけに、栗山監督は“抑え大谷”のオプションを捨てきれないのではないか」(同前)

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