「ウマい話を持ってくる人」に思う「お前がやれよ」 銀行の営業マンの儲け話に付き合う必要はない?(中川淳一郎)

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「ルフィ」「キム」がかかわっている全国の連続強盗事件ですが、末端の実行役は日当100万円等の高額報酬に引かれて犯罪に手を染めました。しかし、次々と逮捕されているわけで、後悔している者もいることでしょう。個人情報のみならず、家族の情報も握られ、今後の報復や脅しにおびえる人生を送ることになります。

 大体、「ウマい話なんてない」という世の中の大原則を知っていればこんなバイトに応募するワケがない。何かウマい話を持ち掛けてくる人って、別にあなたにとってウマい話を持ち掛けてきているわけではないのです。自分にとってウマい話を持ち掛けているのです。

 いや、ウマい話を持ち掛けてくるのであれば「お前がやれよ!」で全部終わるんです。なんで儲け話を他人に言うのですかね? 自分がその件を独占すれば利益を全部取れるじゃないですか?

 それをつくづく感じたのは、銀行の営業マンとのやり取りです。2013年以降、私は銀行口座に預金が増えまくり、メインバンクからやたらと電話が来るようになりました。REITだの国債だのナントカファンドだのと手を替え品を替え営業してくる。

 もちろん、彼らは「これは儲かります!」みたいに言うのですが、700万円ブチ込んだものが気付けば480万円に減っていたこともありました。

 なんで私が彼らの電話をとり、実際に会うことになったのかといえば「ウザいから」が最大の理由です。とにかく電話が多いため「分かった分かった。お前から何か買えばもう電話してこないんだろ!」とばかりにヤツらの提案する投資をしてしまうわけです。

 あぁ、アホみたいでした。ヤツらが提案してくるものなんてロクなものがなかった。5千万円をブチ込んだ商品は突然の円安により5%の利益が。元々「5%出たらさっさと売れ!」と言っていたのでソッコー売りましたが、5%の利益が出るのに9年です。

 結局「おいしい話」を持ってくる人間は、「だったらお前がやれ」に絶対に反論できないんですよ。理由は「それが必ずしもおいしい話かどうかは分からない」から。しかし、自分の営業ノルマやら体面のために、その「おいしい話」に乗っかる営業先をなんとか見つけるわけですね。

 正直、こちらとしては、そんな自分の営業成績だけを考えているようなヤツに付き合う必要はない。日本の預金利率の異常な低さにもかかわらずカネを預けてやっているのに、ちょっと多めに持っている預金者を狙い撃ちにして「ここに投資しませんか!」「このままではもったいないです!」と言ってくる。

 うるせーよ。余計なお世話だ。だったらお前が買え。

 本当に、銀行員との付き合いを経て「ウマい話」にはいいことはないな、ということがよく分かりました。まぁ、ある程度バックがしっかりした人間からそんな経験をさせられたことにより、もっと怪しいヤツからだまされることがなくなったかも、とはいえるでしょう。

 あと、雑誌の「上がる株」「これから爆騰株」とかも大体うそです。これらはずっと見ていますが、大抵ハズレです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年2月16日号掲載

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