《裁判資料入手》 フィリピンの収容所に「1回2000万円」を運び続けた“ルフィの恋人”の素顔

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「出し子」「受け子」のリクルーター兼監督者

 Sが関与を問われた事件とは、まず“掛け子”が警察官や金融庁職員を名乗って「口座から不正出金があり、キャッシュカードの封入作業が必要だ」などと電話をかける。次に警察官などを装った“受け子”が被害者宅を訪れ、キャッシュカードをすり替えて詐取。被害に遭った7人は大阪や京都、奈良、東京などに住む71歳から89歳の高齢者だった。

 判決文は〈(Sは)受け子兼出し子らのリクルート役として(中略)関与するようになり、その後も、日本とマニラを行き来しながら、リクルート役として、受け子兼出し子らの選別や上位者との仲介、稼働状況の確認等を行っていた〉と認定。つまり末端要員でなく、グループの“幹部クラス”と目されたのだ。

「渡邉と恋仲になったSはフィリピンに計7回渡航し、1回につき数千万円のカネを運んでいた。すべて高齢者などから騙し取ったもので、Sから渡邉にわたった総額は1億円を超えるとされる。そのカネが収容所職員を手なづけるための賄賂の原資になったと見られている」(捜査関係者)

 検察側の求刑は「懲役7年」だったものの、Sに〈前科前歴がないこと、被告人が犯罪に関与したこと自体については反省〉し、被害者7人のうち6人に対して計805万6000円を弁済した点などが考慮され、判決で刑期は短縮された。

報酬は「50~60万円」

 実は犯罪収益などで得た現金を運搬する「運び屋」は女性のケースが多いという。実際に運び屋を使ってフィリピンなどへ現金を持ち込んだ経験のある振り込め詐欺グループの元関係者がこう話す。

「女性のほうが警戒心を抱かれにくいことに加え、特にフィリピンのように出稼ぎに行く女性が多い国だと空港の検査でも(女性は)スルーされる確率が高い。そもそも1000万円の現金といっても重さは1キロ程度に過ぎず、スーツケースやキャリーケースに隠すのは難しくない。報酬は“1000万円を運べば50~60万円”というのが相場だ」

 また「現金の運び屋」は受け子や出し子と比べ、リスクは格段に低くなるという。

「万が一、入国時に見つかってもカネで済むケースは多い。フィリピンが犯罪者に人気なのは、物価が安いことと、何よりチップ(賄賂)で融通が利く場面が多いこと。振り込め詐欺の“テレアポセンター(拠点)”が多いのもそのためだ。実際、10年前には金のインゴットを両ポケットに入れてフィリピンから持ち出した人間もいるほど、出入国の管理はユルい。ただし、今回の一件で“犯罪者天国”だったフィリピンも変わるかもしれない」(同)

“海賊王”を騙る卑劣な犯罪者と、威信を懸けた警察当局の攻防がこれから始まる。

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