パワハラで辞める“若い漁師”が多発…就業支援団体が「見て見ぬふりはできない」と講じた対策とは

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若手漁師をマッチング

 ただ、時代は様変わりしている。まず、昭和から令和まで漁業を巡る環境は激変した。各国200カイリ体制の定着や、マグロをはじめとした水産資源の減少に伴い、世界の漁場は大幅に縮小。「より遠くへ、より多く魚を獲ろう!」という時代ではなくなり、サスティナブルな漁業に取り組む時代となった。

 じり貧の漁業とは言えども、かつて「水産大国」と言われた日本で、漁業の灯を消すわけにはいかない。その意味でもっとも大事なのは、一次生産者である漁師の存在であろう。2022年4月にパワハラ防止法が中小企業にも義務化されるが、昭和の厳しい環境下で船上作業に当たったベテラン漁師の中には、今の若者に対して物足りなさを覚えるケースが多いようだ。

 現実に「パワハラで漁師を辞めました」という若者がどれくらいいるのか、はっきりしたデータはないが、そうした海上での理不尽を何とかしようと対策に乗り出しのが、一般社団法人・全国漁業就業者確保育成センター(東京)だ。この組織は、漁業者の求人サイトの運営や募集イベントを手掛けており、漁業会社や漁業を営む個人の漁師からの要望に応え、主に若手漁師を募り、マッチングさせている。

 運営資金は水産庁の補助金で賄っており、事務職員数人という規模の組織である。同センターで事務局長を務める馬上敦子さんは「海の仕事に憧れて漁師になった大事な若い世代が、ひどい目に遭って船を下りてしまうことが少なくない。それを見て見ぬふりは決してできない」と語気を強める。

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