2年連続で投手5冠「山本由伸」がプロ1年目に直面した“限界”…「筒香嘉智」を指導した“先生”が「フルモデルチェンジが必要」と伝えた理由

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投げる球が明らかに変わった

 シーズン中は数週間に1度だったのが、オフになると毎日朝から日が暮れるまで取り組むようになった。密度が濃くなり、理解は飛躍的に深まった。

「矢田先生に教わるようになった当時から、『あっ、これだ』と思っていました。でも2、3週間に1回行って理解できていたかと言われたら、今になって思えば、理解できていなかったようなものですね。筒香さんからも、『この取り組みは本当に深いものだから考えてやらないといけないし、それを野球につなげるのが大事だよ』と考え方の面も指導していただきました。必死に毎日を過ごして、少しずつ入っていけた感じですね」

 2018年1月を迎えた頃には、大きな変化が現れた。

「とんでもない球を投げ出しましたよ。筒香君も『おお!』って言っていました」

 変化に驚かされた矢田は、岡山県で運動具店を営む鈴木一平に連絡した。地元でボーイズチームの監督を務める鈴木は山本を中学生の頃から知り、自身が心酔する矢田とつなげた人物だ。

 鈴木が大阪まで見に行くと、山本は明らかに進化していた。

「もうここまでわかっているの? 率直にそう思いましたね。投げている球も明らかに変わっていましたし」

 投げている球に加え、投球フォームも大きく変化していた。高校時代のようにオーソドックスな投げ方ではなく、現在の形に変わっていたのだ。

 山本は、矢田からフォームについて言われたことは「ほぼない」と言い切る。教わった身体の使い方を突き詰めていくうちに、自然と今の投げ方にたどり着いた。

「エクササイズを行い、外でやり投げをして、じゃあボールを投げるならこうかなとやっていきました。その連続で、どんどん投げる形が変わっていきましたね」

 誰もが驚いた山本の快進撃は、ここから始まった。(敬称略)

以下、第3回に続く

中島大輔
1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年からセルティックの中村俊輔を4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。2023年2月に新刊『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮新書)を発売予定。

デイリー新潮編集部

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