「江川事件を画策したのは父」と語った長嶋一茂に張本勲が反論 「ミスター本人から違うと聞いた」

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「空白の一日」の“黒幕”はミスターだった――。昭和の球界を揺るがした「江川事件」の当事者でプロ野球解説者の江川卓(67)に、衝撃告白をしたのは長嶋一茂(57)。新年早々公開された動画の波紋は、さざ波のように広がって……。

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 江川が自ら出演するYouTubeチャンネル「江川卓のたかされ」で、元日に投稿した動画が球界で秘かに話題を集めている。

 問題の動画では、江川と対談した長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督(86)の長男・一茂が、45年前の「江川事件」についてミスターから聞いた話として、以下のように発言したのだ。

〈(事件で)暗躍というか、画策というか、作戦を引いたのは父親〉

〈ジャイアンツのイメージも悪くしたし、江川さんのイメージも悪くしたっていうのは、全部父親のせい〉

 具体的にミスターがどう関わったのかは触れずじまいだったが、一茂は何度も江川に頭を下げて謝罪。江川は“お気遣いいただいて……”と述べるにとどまった。

 振り返れば「江川事件」は1978年のドラフト会議前日、公式ルール上は「空白の一日」とされた日に巨人が江川入団を発表したことに端を発する。学生時代から巨人入りを熱望した江川は、前年のドラフト指名で交渉相手となった西武からの誘いを拒否。そこで巨人がルールの抜け穴を見つけ江川と契約を強行し、世間から猛批判を浴びた。

 とはいえ、その当時から江川の母校・作新学院の理事長で衆院議長も務めた船田中(なか)氏や、巨人の球団幹部が青写真を描いたとされ、ミスターが画策したという類の話は伝わっていないのである。

「喝ですよ」

 ご存じの通り、昨年9月にミスターは脳内出血で入院し、公の場には姿を見せていない。長年、ミスターの闘病生活を取材しているスポーツニッポンの元記者で、スポーツジャーナリストの吉見健明氏に聞くと、

「昨年のクリスマスも正月も都内の自宅には帰れず、大学病院でリハビリに励んでいるようです。『江川事件』の当時、監督だったミスターが江川入団を熱望していたのは周囲にも知られていた話ですが、画策したかどうかまでは……」

 この十数年間、長嶋家は父と子の確執が度々報じられてきた。雪解けの兆しが見えぬ中、父の不在に乗じて息子が謝罪する格好になってしまってもいるわけだが、巨人OBで野球評論家の張本勲氏はこう憤る。

「『空白の一日』をミスターが画策したなんてことはないですよ。名球会の会合など折に触れて、ミスター本人に私から質問しましたが、あれは法律家たちが練って考えたことで、江川本人も実情を知らなかった。あの時、一茂は中学生だったわけで、何を知っていたというのよ。今度、彼に会ったら、どやしつけないといかん。オヤジさんを攻撃しているようなもので、喝ですよ。大喝です」

 江川本人に聞くと、

「配信動画は毎回台本なしのぶっつけ本番、アドリブで進めています。私自身、初めてこの話を聞きましたし、一茂さんの感覚でお話しされたことについてコメントすると、ニュアンスが変わってしまうので、申し訳ありませんが勘弁してください」

 戸惑う様子が伝わってくるが、当の一茂にも取材を申し込んだが返答はなかった。

 親の心子知らずとは言うけれど、あまりに人騒がせな話ではある。

週刊新潮 2023年1月26日号掲載

ワイド特集「どうする難局」より

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