リブゴルフがテレビ放映権獲得 米「CWネットワーク」と結んだ“異例すぎる契約”内容とは

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フランチャイズ化にも好影響

 今回の契約でリブゴルフとCWには、それぞれどんなメリットがあるのか。

 CWがオンエアしている番組の大半は、ティーンエイジャーから30歳代ぐらいまでの若い層、とりわけ女性がターゲットだ。映画やドラマなどラインナップは多彩だが、そこにスポーツ中継は一つもなかった。

 リブゴルフの試合を中継することで、CWは初めてスポーツ分野に手を広げることができ、男性や中高年層を含めたゴルフファンを新たな視聴者として取り込む可能性を得た。ゴルフ界で何かと取り沙汰されるリブゴルフと組むことで、CWそのものも話題を集めることができる。

 一方、リブゴルフのほうは、前述の通り、試合の中継を広範囲の人々に見てもらう必要上、テレビディールを獲得する ことは必須課題であり、CWとの契約を得たノーマンCEOは「念願が叶った」と感無量の様子だ。

 そして、リブゴルフが望んでいるのは、単に「試合を大勢の人に見てもらう」だけではない。2023年から開始予定の「チームのフランチャイズ化」という目玉プロジェクトにとっても、テレビ中継は無くてはならない存在なのだ。

「チームのフランチャイズ化」とは、4名1組の全12チームそれぞれが独自のロゴマークを付したウエアやグッズ、小物などを製造・販売し、収益を出すことを目指すプロジェクトで、ロゴマークやロゴ商品がテレビ中継でどれだけ多く露出するかによって、アピール度も売れ行きも大きく異なるはずである。

 ある意味、テレビ中継の有無が、このプロジェクトの成否を左右すると言っても過言ではない。だからこそ、2月24日から今季の初戦がメキシコで開催されるよりも前に、ノーマンCEOは何としてもテレビ放映権の契約を獲得したかったのだ。

 CWによるリブゴルフの中継は、米国内ではアプリ視聴も可能になるとのこと。しかし、CWでの放送時間が限定されているため、アプリでの視聴は「金曜日のみ」になる見込みだという。

 その金曜日が3日間54ホールで競われる試合の最終日とうまく重なれば、いい数字が取れる可能性はある。ゴルフの「テレビ中継」「放映権契約」と言えば、ここ数年、日本の女子ゴルフ界でも揺れている。

 一方で、PGAツアーの日本におけるテレビ中継に長年にわたって携わってきたNHKが、ついに放映権を手放した。代わりにU-NEXTが日本国内の配信パートナーに加わった。また、通販でお馴染みのジャパネットたかたが開設したBS放送局「BSJapanext」による無料放送と公式アプリでの同時配信も始まっている。

 ゴルフ中継の媒体も方法も、そして放映権契約の内容も、時代の変化や流れとともに様変わりしている。その動きは、こうしてPGAツアーにも、日米双方にも見て取れる。

 リブゴルフが喉から手が出るほど渇望していた放映権契約は、今はきわめて「異例」だが、ゴルフ中継の世界に一石を投じることになる可能性もある。そして、今はスポーツ分野が弱小のCWがスポーツ中継の主要なネットワークに変貌しないとも限らない。

 もちろん、その逆も起こりうる。そして、この契約発表の翌日(20日)、ワシントンDCに本拠を置くナショナルプレスクラブ(全米記者クラブ)からは、リブゴルフに歩み寄ったネクスタ―を激しく批判し、契約解消を求める異例の抗議声明が発表され、今後の展開に大きな注目が集まっている。

 果たして、リブゴルフとCWネットワークは、どんな対応を見せるのか。ともあれ、お手並み拝見である。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やテレビ・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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