ロシア軍の“嘘の戦果報告”が次々発覚…世界から失笑されても“大本営発表”を続ける苦しい事情

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嘘が通用するロシア社会

 ただし、戦いを有利に進めている国が常に正確な発表を行うとは限らない。戦果発表はまさに情報戦だ。劣勢の国だけでなく優勢の国も、戦果は大きく伝え、被害はなるべく隠す。

「ウクライナもロシアも“虚偽すれすれ”の発表を繰り返しています。ロシアの場合は、プーチン大統領の岩盤支持層に高齢者が多いことも大きな影響を与えていると考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)

 ロシアの高齢者にはネットを使いこなせる者が少なく、欧米メディアの報道に触れる機会もほとんどない。そのため、ロシア軍の“大本営発表”を信じてくれる。少なくとも信じようとはしてくれる。

「ロシア軍は嘘がNATO側にバレるのを承知の上で、岩盤支持層である高齢者の戦意を高揚させるために虚偽の発表を繰り返しているに違いありません。現場では嘘の積み重ねで感覚が麻痺し、チェック機能が低下した結果、『存在しない戦闘車を破壊した』という赤っ恥の発表を行ってしまったのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 NATOがロシアの暴走を恐れ、ロシア領内には攻撃しないよう、ウクライナに釘を刺していることも重要だという。

「大多数のロシア国民にとってウクライナ戦争は、今も“対岸の火事”です。高齢者も口コミなどでロシア軍の劣勢を把握していて不思議はありません。それでも自分や子供、孫に被害が出なければ、虚偽発表に怒ることはないでしょう。ロシア国内が空襲でもされない限り、ロシア軍が嘘をつきやすい状況は続くはずです」(同・軍事ジャーナリスト)

目を背けたい現実

 何より最も大きな理由として、もしロシア軍が真実を国民に発表すれば、国民が激しく動揺することが挙げられる。

「もしロシア軍が『実はウクライナ軍の激しい抵抗で、我々には深刻な被害が生じています』と公に認めたらどうなるでしょうか。国民は、これまでの不満を爆発させるはずです。一気に大規模な反戦デモ、反政府デモが発生し、プーチン政権の信頼度は地に墜ちます。最悪の場合は保守派と改革派で国内が内戦状態になるかもしれません」(同・軍事ジャーナリスト)

 ウクライナで何が起きているのか──人によって差はあるだろうが──ロシア国民も様々な情報は得ている。だからこそ“嘘の大本営発表”が必要になってくるという。

「制服を着た偉い軍人が『我が軍は戦果を挙げています』と発表することで、ロシア国民がギリギリで踏みとどまっているという側面もあると思います。老若男女、誰だって自国が崩壊してしまうのは嫌でしょう。現実から目を背けるため嘘の戦果を必要としているのは、ロシア軍だけでなくロシア国民も同じなのです」(同・軍事ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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