ロシア軍がウクライナに最新型戦車「T-14」を投入できない“恥ずかし過ぎる理由”

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 Newsweek日本版は1月10日、「ロシアの最新鋭戦闘機は怖くてウクライナ上空に飛べない──英国防省」との記事を配信した。記事のタイトルから、ある程度の内容は推察できるが、軍事ジャーナリストは「陸上の戦闘でも同じことが起きています」と指摘する。

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 陸上戦で何が起きているのかを解説する前に、まずはNewsweekの報道を確認しておこう。担当記者が言う。

「Newsweekの記事は、イギリス国防省が発表した最新の報告書を元に、ロシアの戦闘機Su-57について報じています。同省はSu-57を《ロシア最新鋭の第5世代超音速ジェット戦闘機》と位置づけ、ロシアにとっては“虎の子の最新戦闘機”であるため、撃墜のリスクを恐れてウクライナ戦争では使用できないというジレンマを指摘したのです」

 軍事ジャーナリストは「同じことは陸戦でも起きています。ロシア軍は“虎の子の最新戦車”の出撃を躊躇しているようなのです」と言う。

「ウクライナ戦争の緒戦では、ロシア軍の戦車部隊は1992年に正式採用されたT-90が中心でした。ところが予想外の激しい抵抗を受け、甚大な被害が出たのです。2015年にデビューした最新鋭のT−14は生産台数が充分ではないため、少数を早い段階で投入すると思われていました。ところがロシア軍は、1961年に試作品が完成したT-62を最前線に送ったのです。世界中の軍事関係者やジャーナリストが、『あんな骨董品がまだ残っていたのか』と驚きました」

戦車部隊の大損害

 オランダの軍事情報サイト「Oryx」は、SNSなどに公開された画像や動画からロシア軍とウクライナ軍の損害を計算し、発表している。

 デイリー新潮は2022年10月、「ロシア兵は戦場から自転車でトンズラ…じつはロシアがウクライナの最大の武器支援国という真実」という記事を配信した。

 この時、Oryxは《ロシア軍の戦車1280両のうち、734両が破壊》、《ウクライナ軍に鹵獲されたものは442両》と発表していた。鹵獲(ろかく)とは《敵の軍用品・兵器などを奪い取ること》(デジタル大辞泉)という意味だ。

 では最新の数字をチェックしておこう。1月18日にOryxを閲覧すると、《ロシア軍の戦車1619両のうち、951両が破壊》、《鹵獲されたものは536両》との調査結果が掲載されていた。確実に数字が増えていることが分かる。

「ロシア軍の戦車部隊が敗北を重ねていることが分かります。にもかかわらず、最新型のT-14は投入されていません。NATO(北大西洋条約機構)陣営のイギリスは、チャレンジャー2のウクライナ軍への供与を決めました。西側が主力戦車の投入を発表したのですから、ロシアは今こそT-14を投入すべです。T-14が“ゲームチェンジャー”になり得る可能性もあるのです。それでもロシア軍がためらっているのは、Su-57と同じ理由だと考えられます」(同・軍事ジャーナリスト)

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