ドラフト4位入団の“小柄”な右腕「山本由伸」は、なぜ「日本のエース」になれたのか オリックスのスカウトが見抜いた“日の丸を背負える才能”

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「これは逃してはならないピッチャーだ」

 山本が高校2年生だった2016年2月某日、山口は都城に視察へ出かけた。強風が吹く夕刻、ブルペンで投球練習をするには好条件ではなかったが、それが逆に山本の資質を一つ浮かび上がらせた。

「すごく寒い中でのピッチングだったけれど、とてもバランスよく投げていました。だいたいの高校生の場合、そうした状況では寒いそぶりを見せながらのピッチングになります。でも、由伸はそういうそぶりをまったく見せませんでした。今もそうですけど、練習にすごく高い意識を持ってできる選手だなと思いました」

 自身を成長させていける精神面の強さは、MLB(メジャーリーグ)では「メイクアップ」と言われて評価項目の一つになる。山口は山本の内面にも魅了され、継続的に追いかける必要性を感じた。

 高校3年春時点で、山口の目には「一軍半レベル」と映った。初回から降板するまでストレートの球速は147~8km/hを維持し、内外角に球を出し入れすることができ、変化球でも腕の振りが緩まない。「これは逃してはならないピッチャーだ」と球団の会議でプレゼンを続けた。

 同時に「一軍半」という評価は、一軍定着には何かが足りないということになる。

 その理由として考えられたのが、耐久性だった。プロの先発投手は週に1度の登板、ブルペン投手なら最低でも2連投できることが不可欠になる。いずれの役割でもスタミナと、投球時の出力に肩肘が耐えられるように筋力や身体の使い方を身につけなければならない。

 アマチュアは短期決戦だが、プロでは半年に及ぶ戦いが待ち受ける。ゆえにルーキーたちはある程度時間をかけて育成されるが、果たして長丁場のペナントレースで山本は力を発揮できるようになるのか。

 そうした観点に立ったとき、「小柄」の山本が現在の姿になると想像できないスカウトが多かったのかもしれない。少なくとも、3位までの入札にはどの球団も動かなかった。

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