「人と暮らせない」「食事も料理も嫌い」 女優・吉行和子が明かす「おひとりさま生活」の楽しみ方

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食事は「最低限の栄養素補給」

 だいたい私は食べること自体も好きじゃありません。仕方なく「最低限の栄養素を」と考え、ヨーグルトとかお肉や魚、野菜を食べているけれど、すべて薬だと思いイヤイヤ飲み込んでいる。コロナ禍になって苦手な料理も自分でするようになりましたが、本当に苦痛。うちには油のほかには塩、コショウ、醤油くらいしか調味料がないから、そもそもおいしくなりようがないの。毎度“なんて下手なんでしょう!”“あぁまずい!”なんて悪態をつきながら口に食べ物を放り込んでいるんですから、寂しいとかいう以前の問題です。

 もう究極に面倒くさいときはバターの塊を齧るだけで済ませたり、なんてことも。バターは、小さい頃に母がよく、朝食として私と妹の枕元に塊をボトンッと置いていっていた、ある意味、おふくろの味。「三つ子の魂百まで」と言うけれど、未だにそんなものを齧っているんだから、嫌んなっちゃうわよね。

 もちろん、私だって気の置けない友人たちとおいしいものを食べたりするのは好きなんですよ。ただ、ひとりでの食事や、あまり気の進まない仕事の打ち上げなんかは、栄養を取りためておく場だと割り切っているんです。

仕事が一番のごちそう

 こんなふうに話すと、楽しみのない人生ねって思われるかもしれませんが、私はとにかく仕事があればそれでいい。仕事が一番のごちそうだし、現場で働いていれば機嫌がいいんです。女優は定年もありませんし、年相応の役もある。だから、いい職業に就いたと思っていますよ。嫌いな食事を取るのも、運動をするのも、すべて女優を続けたいがため。いつまでオファーがあるかは分かりませんけれど、求められる限りはね。

 そういう意味では、母に似ているのかもしれません。うちの母も97歳まで現役の美容師として働いていましたから。でも、母の場合は、107歳で亡くなるまで10年近く寝たきりの生活だった。最期まで頭はしっかりしていたんですが、かえってそれがかわいそうで。

 私はそれだけは嫌。仕事ができなくなったらさっさと逝ってしまいたい。

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