“山の神”今井正人が語る、野球をやめて陸上を選んだ「覚醒の時」 夏に強い体質でパリ五輪出場なるか(小林信也)

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パリ五輪へ

 今井はトヨタ自動車九州で現役生活を続けている。

「パリ五輪のマラソン代表になってしっかり走りたい。陸上を始めた時にオリンピックのマラソンで結果を出す!と自分と約束しましたから、行かないわけにいきません」

 すでに38歳。年齢を懸念する声もあるが、今井自身は完全にポジティブだ。

「暑い夏のマラソンは速い選手と差を縮めるチャンス。正直、タイムで勝負できるとは思っていない。バルセロナ五輪で銀メダルを取った森下広一監督の指導方針のとおり、速い選手でなく、強い選手が目標ですから」

 22年2月の大阪マラソンで2時間8分12秒、6位入賞して23年秋のMGC(五輪選考会)出場権を得た。

「代表合宿で暑さの適性を調べたことがある。汗の質、腸内の深部体温も計った。すると、『夏に強い体質』という結果が出た。元々夏が好き。暑い中で走るのも好き。大事なのは暑さへの慣れと準備。厳しい暑さの中で、タイムを持っている選手にどう勝つかが大切です。それって面白いですよね」

 山の神が今度は「夏の神」になれるか。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年1月5・12日号掲載

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