テスラ株急落、GAFAの大量リストラ…米テック業界に未来はあるか

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ESG投資に翳り

 創業から年月が経ち、巨大テック企業のビジネスモデルが成熟化する中、注目を集めているのはグリーンテック企業だ。

 グリーンテックとは、持続可能な社会を実現するための資源や環境に配慮したテクノロジーのことだが、その成長に欠かせないのはESG(環境・社会・企業統治)からの資金の流れだ。

 ESG投資は2015年以降、急拡大してきたが、昨年のESG投資額(社債発行額)は前年比20%減の3932億ドルと初の減少となった。

 ロシアがウクライナに侵攻したことで状況が一転したからだ。

 エネルギー投資に関心が集まる一方、脱炭素を促すESGは相対的に儲からなくなり、ブームが一気に冷え込んでしまったのが主な理由だ。

 ESG投資が政治的色彩を強めていることも大きなマイナス要因だ。

 米国では共和党系の議員や州知事がESG投資のことを「石油や天然ガスなどの化石燃料業界を不当に差別するものだ」と批判する動きを強めている。連邦下院で共和党が多数派となり、気候変動対策に関する党派対立がさらに激化することが危惧されている。

 欧州では見せかけの気候変動対策(グリーンウォッシング)を減らすための規制強化が進んでおり、企業が意図せずルール違反を犯してしまうリスクが高まっている。

 このように、企業のESGに対する取り組みは、デメリットがメリットを上回る状況になりつつあると言っても過言ではないが、ESGからの資金提供が滞る事態となれば、グリーンテック業界から次のGAFAが誕生するのは難しいだろう。

 米テック業界は深刻な状況に陥ってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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