冬ドラマ「15本」のトレンドを読む キーワードは“非リアル”

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 冬ドラマが始まった。歌には世相が反映されるが、ドラマにも時代の色が表れる。バブル期とその前後のトレンディドラマが好例だ。この冬ドラマにはどんな色が表れているのか? その1つは「非リアル」である。

非リアルの作品が目につく冬ドラマ

 秋ドラマは「エルピス-希望、あるいは災い-」(フジテレビ系)、「PICU 小児集中治療室」(同)、「ファーストペンギン!」(日本テレビ)とリアルな作品が目立った。

 冬ドラマの傾向は逆。死んだ男(佐藤健[33])の魂が現世をさまよい続ける「100万回 言えばよかった」(TBS)や、交通事故死した主人公(安藤サクラ[36])が人生を赤ん坊からやり直す「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ)、江戸時代の将軍職を女性たちが握る「大奥」(NHK)と非リアルな作品が目につく。

 実は昨年の冬ドラマもそうだった。他界した妻(石田ゆり子[53])が帰って来る「妻、小学生になる。」(TBS)、医療知識が豊富な主人公(浜辺美波[22])の少女がクローンだった「ドクターホワイト」(フジ系)、ファンタジー色が強かった「ミステリと言う勿れ」(同)が話題になった。

 それにとどまらない。一昨年の冬ドラマの傾向も同じ。刑事(綾瀬はるか[37])と殺人容疑者(高橋一生[42])の魂が入れ替わる「天国と地獄~サイコな2人~」(TBS)、主人公(長瀬智也[44])が死んでいることに本人も父親(西田敏行[75])も気づかない最終回が描かれた「俺の家の話」(同)、主人公(大倉忠義[37])が過去を変えて妻を替えた「知ってるワイフ」(フジ)と非リアルな作品が並んだ。

冬は非リアルな作品に向く

 冬は非リアルな作品に向くようだ。海外でも冬を主な舞台とした非リアルな物語が多い。あり得ないことが立て続けに起きた韓流ドラマ「冬のソナタ」(NHK、2003年)、愛の力で100年以上も生かされた主人公が悪魔の化身と戦って末期ガンの少女を救う映画「ニューヨーク 冬物語」(2014年)などである。

 なぜ、冬は非リアルな作品向きなのか? まず環境のせいだろう。長い夜、白い吐息、空から落ちてくる雪。また、冬は日照時間が減ることで脳内の神経伝達物質である「セロトニン」が減り、寂しくなって、人恋しくなるとされている。これも影響しているのではないか。

 非リアルな作品のほうが、リアルな作品より感動を呼べる場合もある。例えば恋人への未練で死者が現世にとどまれば、愛の力の強さを訴えられる。また、やり直し人生を描くことで、日々を大切に生きることの重要性を問い掛けられる。

 今期の冬ドラマは先に挙げた「100万回――」「ブラッシュアップ――」「大奥」以外もリアルを追求しない作品が揃った。

「Get Ready!」は主人公(妻夫木聡[42])がどんな難手術も可能にしてしまう上、生死に関わる手術でも同意書を用意しない。半面、それによって、命の意味や医療格差などをより鮮明にしている。

「忍者に結婚は難しい」(フジ)は価値観も目的も違う甲賀忍者(菜々緒[34])と伊賀忍者(鈴木伸之[30])の夫婦を描く。あり得ない話なのだが、これによって結婚というものの意義を問い掛けるつもりだろう。

 冬は空想的な作品も楽しむ好機。もっとも、非リアルな作品を放送すれば当たるというわけではない。どの作品も質が問われるのは言うまでもない。例えばリアル系の作品でも「女神の教室~リーガル青春白書~」(フジ)は目標達成のために異質の青春を送る若者たちと、法の精神を併せて描く意欲作で、相当の支持を得そうだ。

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