ドラマ「silent」大ヒットで「シモキタ」周辺が“聖地”に 小田急「再開発」を成功に導いた“地域密着”戦略

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家賃が高騰する下北沢 出店者に「いくらなら払えますか?」

 向井氏らはボーナストラックの開発時に、前出の“個人店の減少“と“家賃問題“を解決するための大胆な手を打った。

「家賃が高騰することで、個人店が減ってチェーン店が増え、下北沢の個性がなくなってしまうのを危惧していました。個人店を増やしたいという思いがあり、ボーナストラックはちょうどそのための場所にできると企画しました」

 ボーナストラックの一部は第一種低層住居専用地域のため、店を作るためには店舗兼用住宅にするしかなく、1階に店、2階は住居という造りになっている。

 実は、個性的な店を求め、地方にも声をかけて出店希望者を募っていたので、住居付きというのはかえって好都合だった。問題は家賃だ。どう決めたのか?

「複数の出店候補者さんにまだ更地だったボーナストラックに来て歩いてもらい、そのまま飲み屋に行って、“あそこで住まいとセットで事業をするなら、いくらくらいの家賃なら払えそうですか?”とヒアリングをしました。“上に住めるなら◯万円ぐらいかなぁ”という声を聞き、皆さんの意見を色々聞いていると15万円くらいが妥当ではという話になったので、家賃は15万円に。その家賃から逆算してプランを決めて工事予算を決めていきました」

 なんと出店者の意見を聞いて家賃を決め、それを元に工費も決めたという。

「silent」最終回で、想が嬉しそうにかすみ草を持って歩いていたボーナストラックの遊歩道のすぐ横の店舗は、こうして造られたのだ。

 では、下北沢~東北沢間の、白い建物が並ぶreloadの街並みはどう造られたのか。

「東北沢は笹塚、駒場、代々木上原といった富裕層や感度の高い方が住むハイソなエリア寄りなんですね。そちらの方々にも下北沢の魅力を知ってもらい、やっぱりたまには来てもらいたい。足を運んで、交流してもらうことで、また面白いことが起こると思うんです。どういうデザインなら響くかと考え、白を基調にした、あえてちょっと下北沢らしくないものにしました」

 想と紬が手話をしながら歩いていた遊歩道は、富裕層も巻き込もうとデザインされていた。

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