海自「特定秘密」漏洩事件、依頼したOBは“暴君”と恐れられた「海上幕僚長」候補だった

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 特定秘密保護法違反で初めての摘発となった、海上自衛隊を舞台とする「特定秘密」漏洩問題。“秘密漏洩”と聞けば、スパイの存在を疑うが、今回は漏洩を促したとされる元海自OBの“ご威光”が事件の背景に見え隠れするという。さらに陸自のセクハラ事件との関連を指摘する声も浮上し、騒動の余波は水面下で広がりを見せている。

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 12月26日、防衛省は「特定秘密」を洩らしたとして海自幹部学校の井上高志・1等海佐(54)を懲戒免職処分とした。自衛隊の捜査機関に当たる警務隊も同日、井上1佐を特定秘密保護法と自衛隊法違反の容疑で横浜地検に書類送検。2014年の特定秘密保護法施行後、初の摘発事案となり、自衛隊内に衝撃が走っている。

 防衛省によると、井上1佐は情報を専門に扱う海自の情報業務群(現・艦隊情報群)司令だった20年3月、神奈川県横須賀市の司令部庁舎で、自衛艦隊司令官も務めた海自OBの元海将に日本を取り巻く安全保障情勢について説明。そのなかに特定秘密に指定される情報や自衛隊法で機密扱いの部隊運用・訓練情報が含まれていたという。

「OBは井上1佐に対し、“講演する機会も多く、正確な情報を知りたい”などと言って情報を求めたとされますが、特定秘密を要求したわけでなく、また得た情報がOBから他国に流出した形跡もないため、不問に付される見通しです。これに対して海自内部からは“不公平ではないか”といった不満の声が上がっています」(全国紙防衛省担当記者)

 実はこのOB、海自内では「知らぬ者はいない“超”のつく有名人」だという。

「次の海上幕僚長」の声も

 海自関係者が語る。

「情報の漏洩先であるOBは、海上自衛官の最高位である“海上幕僚長になってもおかしくない”とまで言われた人物です。防衛省の調査に井上1佐は“(OBに)畏怖を抱いていた”と話したが、同じ海自の人間からすれば誇張とは思えない。事実、現役時代のOBは部下に厳しく接する態度で、広く恐れられた存在でした。愛国心が強く、中国やロシアに情報を売り渡すようなタイプではありませんが、海幕長のひとつ手前の海将の階級で止まったのも、その“苛烈な性格が災いした”と当時は囁かれた。井上1佐が特定秘密に該当する情報を喋ってしまったのも、畏怖心からつい“リップサービス”が過ぎてしまったと考える関係者は多い」

 このOBが自衛官として有能であるのは誰しも認めるところだが、規律に厳しく、部下にも完璧を求める傾向などから「人望があったとはいえず、“暴君”と呼んでいた部下もいた」(同)とされる。

 実際、OBが現役時代、他の隊員たちとテニスをしていた最中に突然、倒れてしまったことがあったというが、「自衛隊員は救命活動のプロなので、すぐに部下がAEDを持って駆けつけ、一命をとりとめました。ただ、この時、周りに集まった面々から“このまま助からなくてもよかったのに……”といった声が漏れた」(同)との“逸話”もあるという。

 今回の漏洩事案が発覚したのは一昨年、防衛省に情報が寄せられたことが端緒だが、「内部でOBを刺した者がいる」との見立てが海自内では浸透しているという。

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