マスターズがリブゴルフ選手の受け入れを発表 その思惑とゴルフ界の反応は?

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 クリスマスを目前に控えた12月20日(米国時間)、男子ゴルフのメジャー大会の一つマスターズ・トーナメントを主催するオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブが大きな決断を発表した。このことが今年6月の創設以来たびたび話題になってきたリブゴルフとPGAツアーとの対立や他のメジャー大会にもたらす影響とは。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

リブ選手16名の出場が確定

 オーガスタ・ナショナルのフレッド・リドレー会長の声明には、「オーガスタ・ナショナルは、マスターズの従来の出場資格を満たしているすべての選手を、2023年マスターズに招待する」と記されていた。わかりやすく言い換えると、従来のマスターズ出場資格を満たしてさえいれば、たとえリブゴルフの選手であっても、オーガスタ・ナショナルはその選手に2023年マスターズの招待状を送る、という意味である。

 この決定により、リブゴルフ選手のうちの16名が、来年4月のマスターズに出場できることが確定した。ちなみに16名のうちフィル・ミケルソン、ダスティン・ジョンソン、パトリック・リード、バッバ・ワトソン、セルヒオ・ガルシア、シャール・シュワルツェルの6名は、「マスターズの過去の優勝者」の資格で来年のマスターズ出場が認められた。

 また、マスターズ以外のメジャー3大会(全米プロ、全米オープン、全英オープン)の過去5年以内の覇者、世界ランキングのトップ50以内といったマスターズ出場資格を現時点で満たしているキャメロン・スミス、ブルックス・ケプカ、ブライソン・デシャンボー、ルイ・ウーストハイゼン、ホアキン・ニーマン、アブラム・アンセル、ジェイソン・コクラック、テーラー・ゴーチ、ケビン・ナ、ハロルド・バーナーの10名にも、オーガスタ・ナショナルは「今週、招待状を送る」と発表した。

出場を認めた裏にある思惑

 サウジアラビアの政府系ファンドの支援を受けたリブゴルフが今年6月に創設されて以来、PGAツアーはリブゴルフへ移籍した選手に資格停止処分を科してきた。両者が共に相手を提訴するなど、「PGAツアー対リブゴルフ」の対立は激化している。

 そんな混乱と喧噪の中、ゴルフ界の注目は、果たして来年のメジャー4大会にリブゴルフ選手の出場は叶うのかという点に集まっていた。

 現状、リブゴルフでは世界ランキングのポイントが稼げないため、リブゴルフに参加する選手の世界ランキングは下降の一途だ。世界ランキングが下降して、トップ50、あるいは、トップ60圏外になれば、メジャー4大会の出場資格を満たせなくなる。そればかりか、メジャー大会の主催者がリブゴルフ選手の出場を制限する可能性も取り沙汰されていた。

 そうした中、リブゴルフ選手であるかどうかに関係なく、従来のマスターズ出場資格を満たしてさえいれば、オーガスタ・ナショナルはすべての選手を来年のマスターズに受け入れると発表したことは、驚きのニュースとして世界のゴルフ界を駆け巡った。

 リドレー会長は声明の中で、これまでマスターズで戦ってきたアーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、タイガー・ウッズといった歴代の名手たちの名を挙げ、「彼らのおかげでゴルフはより良いものになった」と述べた。

 リブゴルフが創設されて以来、ゴルフ界が大揺れしていることは、「先人たちが築いてくれた意義深いレガシーとゴルフというゲームが、男子プロゴルフ界の分断によって衰退しつつある。そのことが悔やまれる」とも記している。

 そして声明の最後で「これまで何年間もさまざまな困難を克服してきたオーガスタ・ナショナルは、再び辛抱強く困難に向き合っていく」という強い意思を示した。

 オーガスタ・ナショナルが「リブゴルフ選手OK」を決めたことは、ゴルフの平和的発展を最優先に考えてのことだ。そして「マスターズは世界の最高の名手たちが集う場所であるべき」と考えた上での決断だった。

 とはいえ、その決断の背景には、さまざまな事情や思惑があったはずである。

 というのも、12月19日時点で、マスターズの出場資格を満たしていた78名のうちの16名がリブゴルフ選手だった。もしリブゴルフ選手を排除したら、来年のオーガスタ・ナショナルに集う選手の顔ぶれが淋しいものになることは誰の目にも明らかだ。だからこそこの16名の出場を認めたと考えるのが現実的であり、妥当でもある。

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