中国は最悪のタイミングでゼロコロナ解除 国際社会にとって今後深刻な問題が

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旧正月、変異型に懸念

「14億人の無菌室」が保たれたおかげで、これまで新たな変異型が出現することがなかったが、筆者は「今後中国から変異型の出現が相次ぐのではないか」と危惧している。

 新型コロナの最初の感染確認から3年が経ったが、世界の研究者の間で「ウイルスの変異の速度が非常に速い」ことに注目が集まっている。

 一般的にウイルスの変異は2種類あると言われている。ウイルスが少しずつ変異していく「小進化」と遺伝的に大きな変化を起こす「大進化」の2つだ。

 インフルエンザの場合、小進化は毎年起きているが、「香港風邪」のような大進化が起きるのは数十年に1度の割合だとされている。

 これに対し、新型コロナは、武漢型から始まって、アルファ型、ベータ型、ガンマ型、デルタ型、オミクロン型と、わずか3年足らずに5回の大進化が起きている。

 大進化が頻発している理由として、「新型コロナはエイズなど免疫不全を抱える人の体内に長期間感染した状況下で持続的な変異を繰り返すからだ」との説が有力だ。

 中国では高齢者へのワクチン接種が遅れており、免疫力が落ちた高齢者が大量に感染することになれば、新たな変異型が次々と出現してもおかしくないだろう。

 オミクロン型はデルタ型に比べ病原性は格段に低下したが、南アフリカの研究によれば、新型コロナの病原性は今後高まる可能性があるという。

 残念ながら、次の変異型はオミクロン型のように感染力や免疫回避性(免疫をすり抜ける能力)が高く、デルタ型のように病原性が高くなるのかもしれない。

 ゼロコロナ政策が解除されたことで中国では来年1月下旬からの旧正月恒例の「民族大移動」が復活する。水際規制が緩和され、海外旅行に出かける中国人が急増すれば、中国発の新たな変異型が世界で猛威を振るうことになってしまうのだろうか。「3年前の悪夢」が繰り返されないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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