岸信夫氏の世襲を阻む「もう一つの名門」 安倍家VS林家の決着もつかず山口県は大混乱

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消えたダブル補選案

 フジテレビで社会部記者を経験したのち、父の秘書を務めてきた信千世氏は地元では大人気だという。

「腰が低く、実力者の懐に入り込むのがうまい。地元で彼を悪く言う人に会ったことがありません。ネット上では世襲に対する反発が広まっていますが、実際、出馬すれば圧勝するでしょう」(県連関係者)

 だが、この世襲に立ちはだかる名家出身の議員がいる。1区の現職・高村正大衆議院議員である。父・正彦氏から地盤を引き継いで2期の当選を重ねてきた高村氏だが、彼の選挙区である周南市は次の衆院選から10増10減の区割り変更で新2区に組み替えとなる。岸家が世襲すると公言した選挙区は、本来は高村氏の“シマ”なのだ。

「自民党では現職優先のルールがあります。高村氏が新2区に手を上げれば、信千世氏は公認を得られない可能性が高い。だから、岸氏が病気を理由に任期半ばで議員辞職し、現行選挙区で来年4月に補欠選挙を行って早々に世襲させてしまうプランも浮上していた。そうすれば、信千世氏も現職として高村氏と同じ立場になれるからです」(同)

 安倍晋三氏の死去で空席となったままの現4区と合わせて、ダブル補選になる展開まで取り沙汰されてきたのである。

人気がない高村氏

 だが今回、岸氏は任期半ばの議員辞職は否定した。ではこのまま、新2区の公認をめぐって岸家VS高村家のバトルに発展した場合、どちらに軍配があがるのか。

「ルール上では高村氏に分がありますが、父親の力や人気面においては信千世氏が圧倒的に有利。元電通マンの高村氏は、『偉そう』『かわいげがない』と地元の評判が今ひとつで、県連のお偉方も信千世氏を支持している。実際、信千世氏との公認調整がつかずに分裂選挙になったとしても高村氏に勝ち目はありません」(同)

 そのため、新1区に高村氏、新2区に信千世氏で調整される案が有力視されている。だが、それも「あちらの争い次第ではどうなることやら……」(同)。現4区から新3区に組み替えとなる下関市をめぐって勃発した安倍家VS林芳正外務大臣(61)との争いが影響しかねないというのだ。

「林家は、晋三氏が凶弾に倒れたことで空席となった下関奪還に執念を燃やしている。もともと下関は、高祖父・林平四郎氏の時代から林家の地盤で、中選挙区時代は安倍家と林家が壮絶なバトルを繰り広げていたのです。安倍家も林家にやすやすとシマを奪われたくないと抵抗を続けている。場合によっては、林氏が新1区に公認され、高村氏が比例に弾き飛ばされる展開もゼロではありません」(同)

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