ゴルフ「米欧日パートナーシップ」体制を解説 日本選手にとっては朗報 その狙いと背景は?

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 12月5日、米国のPGAツアー、欧州のDPワールドツアー、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が、パートナーシップを結んだことが発表された。パートナーシップと言っても、3つのツアーが合体して1つになるわけではなく、毎試合をともに競い合うといった話でもない。それでは、提携することによって何が変わるのか。【舩越園子/ゴルフジャーナリスト】

日本選手の活躍の場が広がる

 今回の契約は3ツアーによる部分的な戦略的提携であり、2022-2023年シーズンからJGTOの賞金ランキングのトップ3には、翌シーズンのDPワールドツアーのメンバーシップが付与されることになった。

 すでに今年6月には、DPワールドツアーの年間ポイントレースであるレース・トゥ・ドバイのトップ10に、翌シーズンのPGAツアーのメンバーシップが授けられることが発表されている。今回のパートナーシップ締結により、日本ツアーのトップ3が欧州経由で米国へ進出する可能性が高まった。また、トップ3から漏れたとしても、DPワールドツアーの予選会へ進む道も開けるという。さらには、茨城県小美玉市のPGM石岡ゴルフクラブで開催されるISPS HANDA CHAMPIONSHIP(ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!)が、2023年からDPワールドツアーの大会となることも発表された。

 DPワールドツアーのキース・ペリー会長は、「JGTOは長年にわたり数多くの才能ある選手を輩出してきた」と評価しており、日本ツアーの選手たちがDPワールドツアーやPGAツアーに参戦可能となる「確実なルートを確立できたことを嬉しく思う」と述べた。

 PGAツアーのジェイ・モナハン会長も、「日本は最高峰の舞台で戦うチャンスを手にするに値する世界レベルの選手を輩出してきた歴史がある」として、青木功や松山英樹に続く選手たちの「新たな道筋」を創出できたとパートナーシップ提携を喜んでいる様子だ。

 そしてJGTOの青木功会長も、日本の男子ツアーのさらなる成長が「この道筋において次なるステップにつながる」と語った。

PGAツアーへのこれまでのルートは?

 米欧日の3ツアーの会長全員が言及した新たな「ルート」「道筋」は、日本ツアーの選手にとっては画期的なゲートウエイとなるはずである。

 その昔、日本ツアーの選手がPGAツアーのメンバーシップを獲得する最短ルートは、Qスクール(予選会)を勝ち抜くことだった。Qスクールは1次予選、2次予選、最終予選の長丁場ではあったが、国籍も実績も問われることなく、誰もが可能性に挑戦できるという意味では、当時のPGAツアーの門戸は広く開放されていたと言っていい。

 しかし、その後、PGAツアーは米ゴルフ界のピラミッド構造を強固にする目的でQスクールを廃止し、下部ツアーであるコーンフェリーツアーを経由してPGAツアーへ昇格するルートを整備・確立した。そして従来のQスクールは、PGAツアーではなく下部ツアーへの道へと変更された。

 そのため日本ツアーの選手がPGAツアーのメンバーシップを獲得するためには、Qスクールを突破して下部ツアーに最低1シーズン参戦した上での昇格を狙うか、あるいはスポンサー推薦などで出場したPGAツアーの大会やメジャー大会で優勝するしかなくなった。PGAツアーへの入り口は、以前と比べれば格段に狭められていたのだ。

 そうした中、今回のパートナーシップによって、日本から欧州へ、欧州から米国へという新たな「ルート」「道筋」ができたことは、日本ツアーの選手にとっては願ってもない朗報である。

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